新機種を買う人は全体の25%にすぎない
実際のところ、日本のスマートフォン市場において「高価な新モデル」をすぐに買う人の比率は減ってきている。
以下はマーケット調査会社BCNのスマートフォン売り上げランキングのページだが、リストのトップはほとんど低価格な機種。iPhoneも人気は4万円台で買える「iPhone SE」だ。これは新製品発売前だから、というわけではなく、新製品直後を除き、年間を通じた傾向である。
別のデータも示そう。
リサーチ会社MM総研が毎年発表している「国内携帯電話端末の出荷台数調査」によれば、2020年の総出荷台数は3246万5000台。メーカー別調査によればアップルはシェア1位で、総出荷台数は1398万4000台となっている。だが、同年の「5Gスマートフォン出荷台数」は625万3000台で、その57%がiPhoneだという。すなわち、5G対応のiPhone 12シリーズは約356万台の出荷、ということになる。
5GのiPhoneはiPhone 12シリーズが初。ということは、「日本で1年に売れるiPhoneの25%だけが、秋に出た新機種」という計算が導き出せる。
iPhoneは、実際の価格上昇に加え、スマホの売り方の変化でより高く感じるようになった。日本の市場もそこにはちゃんと適応していて、「懐具合に合わせて機種を選ぶ」ようになっているのだ。
過去モデルでもいいから「iPhoneを選んでもらう」戦略
実のところ、それは日本だけの話ではない。
以下は、今年のiPhoneのラインナップである。新機種である「iPhone 13」が気になるかもしれないが、実際には2019年発売の「iPhone 11」、2020年発売の「iPhone 12」もラインナップにあり、さらに、価格重視の「iPhone SE」もある。
長期的に販売する低価格モデルとして「iPhone SE」を用意し、さらに過去のモデルを実質的な低価格モデルとして価格改定しながらラインナップに残す……というのは、この数年、アップルがずっと続けているやり方だ。例えばiPhone 12 miniは、2020年10月に8万2280円で販売が始まったものの、現在は6万9800円に値下がりしている(ともにアップルでの直販価格、64GBモデル)。