コロナの蔓延によって「田舎物件」が売れるようになった

この新型コロナウイルスの蔓延は、田舎暮らしへの潜在的な願望も人びとのなかに喚起させている。

1カ月半に及んだ最初の緊急事態宣言が全面解除された2020年5月25日以降、内閣府が1万人を対象にコロナ禍による生活意識や生活行動の変化などについての調査を行った。それによると、リモートワーク経験者の24.6%が地方移住への関心を高め、64.2%が「仕事より生活を優先させたい」と答えるなど、ライフワークにおける顕著な志向の変化が浮き彫りにされた。しかも、この傾向は中高年層だけに見られたわけではない。東京23区在住の20歳代の35.4%が地方移住への関心を寄せるなど、若い世代にも顕著な傾向として現れている。

「たしかに」

と、前出の増田さん。

「最初の緊急事態宣言が解除されるまでの半年間は、田舎物件はほとんど売れませんでしたが、解除されてからというもの田舎暮らしを検討するお客さんがどんどん増えてきました。つい先日も70歳ぐらいの男性が、反対する奥さんをようやく説得して、都内から一人で秩父地方に引っ越してきました。そのお客さんは『コロナの件もあるからね』と口にした一方で、元々田舎で畑をやりたいという夢を持っていたようです。

また、バブル期こそ山を買うお客さんがいましたが、バブルが弾けてからは山を買う人などほとんどいなくなった。それが、ここにきて30〜40歳代を中心に、山そのものの購入を検討するお客さんも目立ってきました。うちでも最近、50歳ぐらいの男性が飯能の山2000坪を1000万円弱で購入しています。何でもそこにテントを張って、キャンプを自由に楽しみたいとのことでした。今流行りのソロキャンプに触発されたところもあるのでしょうが、こんな山を買って将来どうするのかな? と、仲介した私のほうが心配になるほどで(笑)」

写真=iStock.com/RelaxFoto.de
※写真はイメージです

移住者の中には極端に人との関わりを避ける人も

コロナ禍を機に、にわかに広がった田舎暮らしへの志向。米倉さんが指摘した通り、そこに「単なるコロナ対策ではなく、コロナが引き金となった潜在的な願望の表出」が、大きく関与しているのは、おそらく間違いないのだろう。

織田淳太郎『「孤独」という生き方』(光文社新書)

実際、私の山荘の近隣別荘地帯でも、2020年の後半になって、物件が突如として動き始めた。他の別荘地帯の一角に定住する下田寛さん(仮名)は、こう口にしている。

「自分の別荘地帯には、売り物件や廃墟の物件も含めて70軒ほどの別荘が建っているけど、コロナが蔓延してからというもの、売り物件の見学の出入りがやたらと多くなった。特に40歳前後ぐらいの若い世代が目立ち、住み始めた人も何人かいるよ。

感染力の強い変異株の登場も影響しているのか、今年(2021年)に入ってからは県外ナンバーの車だけじゃなく、地元ナンバーの車に乗った人も、よく見学にくるようになったね。おそらく地元の街中に住む人までが、もっと静かなところがいいと、山暮らしを検討し始めたんじゃないかな。

ただ、移住してくるのはいいけど、彼らの多くは自分と会ってもロクに挨拶を返さない(笑)。極端な人嫌いもいてね。何でも定年退職と同時に奥さんと離婚して、ここに移り住んだらしいけど、『人と関わりたくない』『自治会の回覧板も回さなくていい』と言うんだ。『頼むから放っておいてくれ』って。その男性は別荘地帯の一番上のひっそりしたところに住んでいて、いまだに誰かと交流している形跡はないね」

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