まるでタリバンの代弁者のような中国の王毅外相

中国の王毅外相は、8月16日におけるロシアのラブロフ外相やアメリカのブリンケン国務長官との電話会談をはじめとして、8月18日にはパキスタンのクレシ外相およびトルコのチャブショール外相と、8月19日にはイギリスのラーブ外相と、8月20日にはイタリアのディ・マイオ外相と……という具合に矢継ぎ早に各国の外相と電話会談を行い、アフガニスタン情勢に関して話し合っている。

もちろんタリバン側に立ち、「彼らはテロ活動と完全に縁を断つと約束しているし、安定した政権運営をスタートさせようと積極的に動いているので、応援すべきだ」という方向のメッセージを数多く投げかけている。つまり、「国家」として認め、国交を結びましょうと呼びかけているわけだ。

まるでタリバンの代弁者さながらの王毅外相のこの動きの裏には、いったいどのような中国の事情と狙いが潜んでいるのだろうか。

「一帯一路」の最後のピースだったアフガニスタン

図表1に示す地図から分かるように、習近平政権が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」をつなぐ上で、アフガニスタンは流れを中断させるアメリカの傀儡政権だった。

白地図に筆者が現状を書き込んで作成した。(画像提供=遠藤誉)

赤で囲んだ中央アジア5カ国は、1991年12月26日にソ連が崩壊した後、1週間の間に中国が駆け巡って国交を結んだ国々だ。石油パイプラインの提携国であると同時に、ロシアも入れた上海協力機構という安全保障の枠組みの重要構成メンバーでもある。

緑で囲んだ中東の国々は、3月31日のコラム<王毅中東歴訪の狙いは「エネルギー安全保障」と「ドル基軸崩し」>で書いた、王毅外相が歴訪した国々だ。

赤い矢印は「パキスタン回廊」から中東に抜けていく「一帯一路」の流れの一部だが、これまではアフガニスタンだけがつながっていなかった。アフガニスタンから米軍が撤退して中国寄りの政権が出来上がれば、先進諸国のヨーロッパを除いたユーラシア大陸が中国寄りの国々によって占められることが、この地図から明らかだろう。

事実、北に目を向ければ、プーチン大統領が「中露は歴史上かつてなかったほど親密だ」と言っているように、中露は仲が良い。中露に挟まれたモンゴルも親中でいられないはずがない。なんという巨大な経済圏が隙間なく出来上がってしまうことだろう。