人種差別を利用した大麻に対するネガティブ報道
そしてデュポン社と石油産業がともに後押しした、ハーストの新聞などによる「反マリファナキャンペーン」もすさまじかった。実はハーストの新聞は、それよりずっと前から大麻産業を排除するためのネガティブ報道を行っていた。
「それからの30年の間、ハーストはメキシコ人が怠け者のマリファナ喫煙者である、という狡猾な偏見をアメリカ人に植え付けようとした」「1910年から1920年までの間、ハーストの新聞社は、黒人男性が白人女性を強姦したとされる事件の大多数は、コカイン使用に直接結びつけられると独断した。
このような報道が10年間ほど続いた後、ハーストは『コカインに溺れた黒人』ではなく、『マリファナに溺れた黒人』が白人女性をレイプしていると考えを改めた」(『大麻草と文明』J・エリック・イングリング訳、築地書館)
さらにヘラー氏の記述はこう続く。
このようにハーストの新聞などは事実無根の情報をもとに大麻の危険性を誇張し、大麻を禁止するための「世論形成」を行った。
権力者側の勝手な都合で大麻は禁止されてきた
加えてこれに呼応する形で、1931年に連邦麻薬局長官に就任したアンスリンガーが、連邦議会で大麻を実質的に禁止する法律(マリファナ課税法)の法案を成立させるための準備を着々と進めたのである。
アンスリンガー長官は議会下院に「マリファナは人類史上最も凶暴性をもたらす麻薬である」とする報告書を提出したが、ヘラー氏によれば、その内容は主に大麻を一方的に攻撃したハーストの新聞の記事の切り抜きなどで作られていたそうだ。
こうしてみると、米国政府は科学的根拠に基づいてではなく、石油産業や化学繊維産業などの要望・圧力や、政治的な思惑で大麻を禁止したことがよくわかる。
しかし、実は、これまでに世界で大麻が禁止されてきた歴史をみると、他の国でも似たような事情、権力者側の勝手な都合で禁止されてきたのである。