アメリカで「SNS関連死」が社会問題になっている。国際ジャーナリストの矢部武さんは「アメリカでは、年間7000人以上がSNSによる性的脅迫を受けており、少なくとも数十人が自殺している。議会もこの事態を深刻に受け止めており、SNS規制法が成立する可能性がある」という――。
スマートフォン上に表示された各種SNSのアイコン
写真=iStock.com/Kenneth Cheung
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「あなた方の製品が人を殺しているのです」

米国では近年、SNS上で虐待されて命を絶つ子どもが増え、未成年者のSNS利用がメンタルヘルス(心の健康)に悪影響を及ぼすことを示す研究調査も発表されて、公衆衛生上の重大な脅威となっている。

「SNS関連死」とも言うべき事態が深刻化するなか、連邦議会の上院司法委員会が1月31日、SNS大手5社のトップを召喚して行った公聴会では、議員たちから企業側の責任を追及する厳しい質問が相次いだ。

公聴会ではまず、フェイスブックやインスタグラムを運営するメタ、TikTok、X(旧ツイッター)、スナップ、ディスコードのCEOが宣誓証言を行ったが、その後ろにはSNS上でいじめや性的搾取などを受けて自殺した子どもの写真を抱いた親たちの姿があった。

そして上院司法委員会のディック・ダービン委員長(民主党)がCEOたちに対し、「子どもたちがオンライン上で直面する危険の多くに責任を負っているのはあなた方です。製品(プラットフォーム)の設計上のミス、信頼と安全を確保するための適切な投資の失敗、基本的な安全よりも会社への忠誠と利益追求を重視した結果、子どもたちが危険にさらされているのです」と述べた。

続けて共和党の重鎮リンゼー・グラム議員が「ザッカーバーグさん、そしてわれわれの前にいる企業代表の皆さん、意図したことではないとわかっていますが、あなた方の手は血に染まっています。あなた方の製品が人を殺しているのです」と厳しい言葉で非難すると、後ろの傍聴席にいた被害者遺族から拍手が起こった。

オンライン上での性的搾取は3600万件を超えている

これに対し、CEOたちは「プラットフォームは注意深く設計しています」「子どもの性的搾取を許さない断固とした姿勢を貫いてきました」「30余りの対策を講じました。児童擁護団体に対し、69万件の報告をしています」などと自らの製品を擁護し、十分な対策をとっていると主張した。

しかし、子どもを持つ親からみればそれらの措置は不十分であり、SNSの危険は増す一方である。

非営利組織の「全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)」によれば、2023年にオンライン上で性的搾取を受けた児童の報告は3600万件(1日あたり約10万件)を超え、このうちの約2900万件はフェイスブックとインスタグラムを使っていたという。