昨年ドラマ化された漫画『セクシー田中さん』の原作者である漫画家の芦原妃名子さんが急死した。亡くなる直前、芦原さんはドラマ化をめぐるトラブルについてSNSに投稿していた。企業のリスク管理を研究する桜美林大学の西山守准教授は「芦原さんには個人攻撃の意図はなかったにもかかわらず、SNS上では『原作者擁護、脚本家批判』の輪が広がってしまった。第三者の善意が、芦原さんを追い込んでしまったのではないか」という――。
「原作の改編」は問題の本質ではない
2023年秋にドラマ化された「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さんの突然の死が1月30日に報じられた。ドラマの脚本をめぐるトラブルが明らかにされた直後であっただけに、各所に大きな衝撃を与えている。
問題の発端は、昨年12月24日に脚本家側がInstagramにドラマの脚本について混乱があったことを示唆する投稿を行ったことにある。
約1カ月後の1月26日、原作者の芦原さんはブログで、自身が意図しない脚本の改変が行われた経緯を説明。新たに開設したX(旧Twitter)でも説明を行っていた。
ここから問題が大きくなり、SNSでは主に脚本家やドラマを放送した日本テレビへの批判が巻き起こり、さまざまなメディアで取り上げられるに至った。
芦原さんは1月28日に投稿を削除、ブログは閉鎖された。X上には「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい」と謝罪の投稿だけが残された。芦原さんの死が伝えられたのは、その2日後だった。
SNSでの「意図せぬ批判」がストレスになった可能性
メディアやSNS上では、原作の改変に関する議論が起きている。芦原さんの最後の投稿を読むと、芦原さんの死の引き金となったのは、原作の改編ではなく、むしろその後に周辺で起きた批判合戦にあるように筆者には思えてならない。
原作改変をめぐる一連のトラブルに加えて、メディアやSNSでの意図しない批判が巻き起こったことが追い打ちとなり、大きな精神的なストレスを抱え込んでしまっていたのかもしれない。
筆者はテレビドラマをあまり見ないのだが、珍しく「セクシー田中さん」は、たまたま第1話を見たことをきっかけにすべて視聴していた。それだけに、裏側でこのようなトラブルが起き、原作者の死という最悪の悲劇まで起きてしまったことは残念でならない。