コロナ禍でもアクセルを踏み続ける

——回転すし業界の競争において、くら寿司やかっぱ寿司を抑えてスシローはトップを独走しています。その要因はどこにあると思われますか。

コロナ禍でもブレーキを踏まなかった、というのが一番大きいと思います。私が社長に就任してちょうど半年後のタイミングで新型コロナウイルスが猛威を振るってきた。その時私はスシローの社長として、5万人の従業員をどうやって守ろうかということを考えました。

「全店舗で営業をしない」という選択肢も考えました。でももしそれで会社がつぶれてしまったら、5万人の職場がなくなるということもありえる。雇用の責任もある中で、ブレーキを踏むべきか、アクセルを踏むべきか悩みました。その時に、感染対策についての正しい情報が世の中に出てきた。であれば、やるしかない。やるならば徹底的にやろう。その時に決めました。

新規出店は計画通りに行いましたし、期間限定キャンペーンのCMもやめませんでした。全部アクセルを踏み続けたんです。FOOD & LIFE COMPANIES CEOの水留浩一も同じ考えでした。とにかく、今まで通り全部やる。何も止めない。その結果が今に至っている、と考えています。

コロナ禍で身に染みた、お客さんのありがたみ

——確かに、コロナ禍でもスシローのCMはよく見かけました。コロナ禍で暗い気分になっていたからこそ、スシローのおいしそうなCMを見て元気が出た方も多かったのではと思います。

写真提供=スシロー
2020年5月の渋谷ジャックの様子

緊急事態宣言の真っただ中だった20年5月「すしで、笑おう」というメッセージで渋谷をジャックさせてもらいました。回転すしチェーンを運営していて、われわれの存在意義がどこにあるかというと、「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」という企業理念。コロナが猛威を振るっていた20年5月ごろは、お客さまも通常の半分ほどでした。そんな状況下でも来ていただけるお客さまに、一番うまいすしを届けよう! というメッセージを従業員には伝えていました。

そんな中で「お客さまが来てくれることが、こんなにうれしいと思ったことはないです」と従業員が口をそろえて言っていたんです。普段は店を開ければお客さまがわんさか来てくれていましたが、コロナ禍では来ない。それは本当に寂しかったですよ。でもコロナ禍という逆境を通して、会社としてひとつになれたという気もしますね。