店内放送の内容はスタッフに一任

——コロナ禍があったからこそ、企業理念に立ち返ることができたということですね。

私は社長になった時に、企業理念に「もっと」を付け加える、という方針を打ち出しました。「もっとうまいすしで腹一杯、もっとうまいすしでもっと心も一杯」にこだわるんだ、と。

スシローは店内調理方式ですが、同じ原材料で同じレシピなのに店によって全然違うすしになってしまうことにもなりかねません。それがすしの面白さでもあり難しさ。だからこそ「すし塾」を復活させ、「すし屋の基本」を学び直すことにしました。ネタの切りつけ方やシャリの炊き方などについて、普段やっていることをもう一度徹底的に見直そうよ、と。

それに加えて、活気のある店づくりにも着手しています。せっかくなら活気がある雰囲気の中ですしを食べた方がもっとうまくなる。コロナ禍で対面接客がなかなか難しい中で、店内の活気をどう生み出していくか。そこで行き着いたのが店内放送です。

店内放送の内容にマニュアルはなく、「各店舗ごとで考えて、元気よくやってみなさい」とスタッフたちに任せています。だから店舗によって店内放送の内容も違うんです。例えばとある地方のスシローにいくと、その地方の方言が使われていたりなど、店長が現場でさまざまな工夫をしてやってくれています。

店舗オリジナルのレーンポップがレーンに流れる(スシロー江坂店で撮影)。
撮影=加藤慶
店舗オリジナルのレーンポップがレーンに流れる(スシロー江坂店で撮影)。

スシローだけが元気でも意味がない

——ほかの外食がコロナ禍で苦戦しているのをどうみていますか。

スシローが元気でも、外食全体が沈んでいてはお客さんは来てくれません。みんなが元気じゃないと困るんです。その中でスシローを選んでもらえるか、競合他社に負けないうまいすしを提供できるか。これが私の考え方です。漁業者、流通、すし屋、お客さまというサプライチェーンがみんな元気なうえで、われわれは良いものを提供したい。

一方でコロナ禍を経て、完全に元通りの世界になるかというと、そうではないと思うんです。そこは会社としてコロナの状況を見極めながらも、今まで通り、アクセルを踏み続けて戦っていきます。

(聞き手・構成=寿司リーマン)
【関連記事】
「お金が貯まらない人は、休日によく出かける」1億円貯まる人はめったに行かない"ある場所"
「これぞ弁当界の大谷翔平」新記録を更新中の"200円ウインナー弁当"開発秘話
「おいしいもんと珍しいもんは違う」三ツ星を断った伝説の店「京味」の哲学
「日本にマクドナルドを持ってきた男」藤田田がゴルフの代わりにやっていた"驚きの趣味"
エビスビールが「ちょっと贅沢なビール」と言わなくなったワケ