リーマンショックでも米国とは違う動きを見せた

1997年末時点で同49.9%だった韓国の家計債務残高は、1999年末に45.1%に減少した後、増加に転じた。2001年6月末の水準は51.2%だ。韓国もアジア通貨危機によって大きな打撃を被った。しかし、家計債務の状況はタイと大きく異なる。

もう一つのケースとして、リーマンショック前後の米国と韓国の家計債務の状況を比較する。2008年3月末時点で米国の家計債務残高はGDP対比98.6%に増加した。同年9月にリーマンショックが発生した後、米国の家計部門ではバランスシート調整と不良債権処理が進み、2014年6月末には80.9%にまで低下した。その一方で、2008年3月末から2014年6月末まで、韓国家計債務残高はGDP比で69.5%から78.1%に上昇した。その後も韓国の家計債務は増加している。

アジア通貨危機で進んだクレジットカードの普及

アジア通貨危機の発生後、韓国の金大中政権は国際通貨基金(IMF)からのコンディショナリティ(経済支援の条件として課される条件)に取り組みつつ、国内では経営に行き詰まった財閥系企業の処理や構造改革を進めた。その一方で、韓国政府は国内での消費活性化のためにクレジットカードの普及促進に取り組み、消費者に300万ウォン(約30万円)を上限に年間カード利用額の20%を所得から控除できるようにした。それには、自営業者の脱税防止の目的もあった。

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その結果、韓国では急速にクレジットカードの利用が増加し、ノンバンクから家計への信用供与が進んだ。見方を変えれば、アジア通貨危機後の韓国政府は財閥系の大手企業の再編や金融システムの健全化を進めた一方、家計には大きな痛みが生じないようにした。その中で、韓国の大手銀行は相対的に信用リスクが低い大手企業への与信供与を重視し、ノンバンクは利幅の厚い個人や家計向けのビジネスを重視した。