何をするにも上司の許可が必要

たとえば、会議の場では、課長以上しか発言しない。部全体の会議で20名以上が参加しており、課長が自分を含め4名いるものの、ほとんどは部長と部長代理がしゃべっており、所々、追随するような意見を課長のうちの社歴の長い2人が述べるだけだったのです。その会議の形式的な進行からしても、E君にとっては大きな違和感を覚えるものでした。

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また、ある時、ある他部門で扱っている製品について知識を持っておきたいと思い、その部門の担当の部長に内線を入れて趣旨を話したところ、「趣旨は分かったが、上からはまだそのような話は聞いていない」という返答があったというのです。

E君はその意味するところがにわかにはわからなかったそうですが、その会社では、他部門に何か協力を要請したり、情報を得たりする際にも、自部門長から相手方の部門長へ話を通してからでないと、事は前に進まないということでした。つまり、ちょっとしたことを聞きに行くにも、部長に話を上げて、部長から部門長に上げて、部門長から相手方の部門長へ話を通して、という上層部経由の長いプロセスを経なければいけなかったのです。

悪しき組織風土が染みついてしまう

他のメンバーたちは、そのような点についてはとうにあきらめているようで、厄介で無駄な時間が掛かっているとは思いつつも、そうした社内手続きを忠実に実行していました。しかし、E君としては、そんなスピード感でこれまで仕事をしたことはなかったし、そんなことをしていては組織の競争力が保てるとは到底思えず、何かにつけてガチガチに決められている社内手続きには閉口せざるを得ませんでした。とはいえX社のたくさん存在する暗黙のルールが早晩改められるとは思えず、悶々とした日々を過ごしているのです。

このように、組織風土というものは、働き方や仕事の進め方に多大な影響を及ぼします。自分自身の価値観と合わない場合には大きなフラストレーションを抱え込むことにもなります。また、新卒で入った企業の風土によって、その後の職業人生が変わると言っても過言ではありません。その風土に応じた仕事の仕方が自然の身に付いてしまうからです。

職業人として、どのような能力を身に付けていくことができるのか、また、どのようなキャリアを歩んでいくことが可能となるのか、そうした選択肢に、最初に属した組織の風土がとても大きな影響を及ぼすのです。しかし、組織風土は、入社してみないとなかなか把握しづらいものではありますが、新卒者であれば、リクルーターや先輩の社員などに聞いてみるたり、ネット上の情報を参照するなり、できるだけ事前に把握しておくことが重要です。