就職活動での会社選びでは、何を重視すればいいのか。人事・組織コンサルタントの相原孝夫さんは「仕事のやりがい、給料、福利厚生といった処遇面は重要ではない。重視すべきなのは、企業ブランドと組織風土。そこで失敗すると転職を繰り返すことになる」という――。

※本稿は、相原孝夫『職場の「感情」論』(日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。

新宿のオフィスに急ぐビジネスパーソン
写真=iStock.com/kazuma seki
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企業ブランドは自尊感情に直結する

会社選びにあたっては、一般的には仕事のやりがいや福利厚生などの処遇面を重視しがちです。しかし、多くの新卒者や転職者を見てきた経験からすると、そうした観点で会社選びをした場合、転職を繰り返し、キャリアを崩していく傾向も多く見られます。実際には、これらの点よりも、もっと重視すべきことがあるのです。

その一つに「企業ブランド」があります。

この点は、根源的な欲求である自尊感情と強く関わっており、入社後のモチベーションに大きく関係する重要な点と言えます。企業ブランドというのは、単に大きな会社であるとか、給料が高い会社ということではなく、多くの人が好感を持っているとか、優れた企業として認知されているという意味でのブランド力です。

この点について、不本意な就職をしたA君のケースから見てみましょう。第一志望でも、第二志望でもなく、志望順で言えば順位がつかない、その他の中の一社に入社したA君。大学の同級生たちの大半は、自分が第一志望としていたような、名だたる企業に就職していきました。

そういうこともあって、入社当初からA君は落胆していました。当然、新入社員研修にも身が入らず、「他の新入社員たちと一緒にしてほしくない」という感情を常に持っていました。配属後も、上司も先輩社員もどうしてもレベルが低く見えてしまいます。「自分は本来こんな会社に入るような人材じゃない」との思いを抱き続けているのです。

成果をあげて上司から褒められても特に嬉しくはなく、「自分がちょっと本気を出せば、これくらい当然だ」と思うばかりです。そうこうするうちに、下に見ていた同僚のうちの数人が、徐々に成果をあげるようになり、自信もついてきたようで、活き活きと仕事をしているのを目にするようになりました。こんな低いレベルで競い合っても仕方がないと思いつつも、A君は徐々に危機感を覚えるようになっていったのです。