やってみないと好きかどうかわからない

一方で、職業選択に際して、「好きなことを仕事にしなさい」ということもよく言われます。「好きなことを仕事にすれば、それはもはや仕事ではなく、熱中してほぼ休みなく働き続けることができる」というわけです。こうした考え方の影響もあり、若い世代の人たちは、より意味のある仕事、より自分に向いている仕事を追い求める傾向にあります。

しかし、好きなこと、情熱を注げることを仕事にすることは、容易いことではありません。そもそも、新卒採用が主である日本においては、やったこともない仕事に就いて、自分が情熱を注げるかどうかなどわからないのではないでしょうか。さらには、職種別採用でもないような場合には、どのような職場に配属されるかもわからないままに、そうした判断ができるはずもありません。

失敗した時に仕事内容のせいにしがち

それと同時に、こうした考えはある弊害を招いている可能性もあります。

仕事で失敗をしたり、辛いことがあったりした場合、「自分が好きな仕事ではないからだ、情熱を注げる仕事ではないからだ」と簡単に結論づけてしまいかねないのです。そして、より自分に向いた仕事を求め、適職探しを始め、転職をすることになります。

オフィスにて悔し気に顔を覆うビジネスマン
写真=iStock.com/taa22
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それゆえ、「好きなこと、情熱を注げることを仕事にしなさい」というアドバイスはいささか無責任な甘言であるように思えてなりません。配属された職場での仕事について、うまくいかない、叱られてばかり、評価されないなど、新入社員時には普通にあることですが、そんな時にふと思い出すのです。そして確信するのです。「情熱を注げる仕事ではないからうまくいかないのだ」と。

情熱のスイッチをすぐに押してくれる仕事など、そうあるものではありません。この点について誤った思い込みをしている人は、新たに始めた活動が難しそうに感じると、すぐに挑戦をやめてしまいがちです。