「不透明な中国製ワクチンのシェアは低下する」

米デューク大学のアンドレア・テイラー副所長は、中国製ワクチンの基本情報が公開されていないことを問題視し、これが将来的なシェア率の低下を招くと分析する。

「中国のワクチンメーカーは他のメーカーが行ったように科学コミュニティーがレビューできるように生データを公開しておらず、透明性を欠く。これは購入を決定する国の指導者に疑問を抱かせるだろう。中国は現在、世界のワクチン市場の主要サプライヤーだが、今後数カ月以内に米欧が国内需要を満たして輸出を増やし、インドも年末までにワクチンの輸出を開始すれば、中国の市場シェアが低下する可能性がある」

「中国の科学力は危険なリスクを孕む」

ワクチン開発に携わっている豪フリンダース大学のニコライ・ペトロフスキー教授は対中警戒派で、「新たな冷戦に突入している米中の協力は非常に困難だ」と指摘する。

「中国はパンデミックを利用しようと積極的だった。しかしコロナの発生を隠そうとし、発生源の湖北省武漢市からの海外渡航を止めなかった。ウイルスは武漢の研究所でつくられたかもしれず、中国製ワクチンの効果もしれている。中国はワクチンというカードを過大評価し、ワクチン外交の戦いに負けていると結論付けるのが合理的だ」

中国の研究開発能力については「中国の制度と安全基準が科学力で世界の先頭に立つという願望に追いつかず、潜在的に非常な危険を孕んでいる。中国の研究所の国際的な規制と将来のリスクを軽減する新しい政策と条約の強化が求められている」と警鐘を鳴らす。

中露の偽情報に注意せよ

中国外務省の趙立堅副報道局長は昨年、「武漢にコロナをもたらしたのは米軍かもしれない」との偽情報をツイートして米国務省を激怒させた。イギリスでも駐英中国大使がSNSの偽アカウント網を使って偽情報や誤情報を拡散させていたことが英オックスフォード大学の調査で明らかになっている。

ロシアについても、ロシアの情報機関がコロナ対応を巡ってアメリカを中傷する情報を垂れ流していたと米情報当局が指摘した。中国もロシアも自国製ワクチンを使ってそれぞれの影響圏を広げようとしており、米欧製ワクチンへの疑念をかき立てることも間接的に彼らの利益になる。

こうしたインフォメーション戦争はワクチン外交を巡っても繰り広げられている。東京五輪・パラリンピックを控え、ワクチン接種を急ぐ日本が注意しなければならないのはSNSで拡散するワクチン懐疑主義の背後に偽情報や誤情報を垂れ流す中国やロシアの“トロール部隊”が潜んでいる恐れがあるということだ。

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