社長自ら女子大、美大を行脚

【白河】デジタル領域というと職種ではエンジニアやプログラマーが思い浮かびますが、御社ではもっと幅広い場が用意されているのですね。女性の人材はどのようにして確保されたのでしょうか。

ジャーナリスト 白河桃子さん(撮影=干川 修)

【江川】新卒採用にあたっては女子大や芸大、美大に行って、当社にはこんな領域があって女性やアート人材の活躍の場がたくさんあります、と一生懸命説明して回りました。当時のアクセンチュアは「男性集団」「ガツガツ働く」みたいなイメージを持たれていたので(笑)。すると翌年から女子学生が入社してくれるようになり、翌々年にはその後輩もという形で女性比率が上がっていきました。

【白河】そもそも、女子大や美大に就職先として認識されていなかったのですね。最近は「新入社員の50%を女性にします」という企業も出始めていますが、一時的に数を採用するだけではなかなか後が続きませんよね。

【江川】その通りです。私は数字を先行させるのはよくないと思っています。入社時の割合が半々だったとしても、その後の活躍の場がなければ、本人に「このままいても活躍できないかも」と迷いが生まれてしまいます。それで退職につながってしまったら、会社にとっても生産的ではありません。ですから、自分が社長としてなすべきことは、まず女性を含めた多様な人材が活躍できる環境を整えること、そして女性比率と業績を同時に伸ばしていくことだと考えていました。

これを実現するため、社長就任後にはダイバーシティ、リクルーティング、ワークスタイルの3つの変革を掲げた働き方改革「Project PRIDE」を開始しました。前の2つは先ほどご説明した通りですが、ワークスタイルではまず在宅勤務制度を全社員に拡大しました。週3日週20時間から働ける勤務制度も整え、勤務時間や場所ではなく、社員が仕事上生み出す価値を軸に評価する形にしたんです。そうした方針に切り替えたことで女性が働き続けやすい環境が整い、結果として女性比率向上につながりました。

さらにコロナ禍を経て、今では社員の大半が在宅勤務制度を活用しています。かなりフレキシブルな働き方ができるようになっていますが、「Project PRIDE」はまだまだ道半ばです。改善せねばならない点はたくさんあります。大事なことは、きちんと課題を洗い出し、手綱を緩めずに解決に向けたアクションを着実に積み重ねていくことです。

大半が在宅勤務でも2桁成長をキープ

【白河】私も御社の働き方改革をずっと取材しているので、まずは「働き方」というのがよくわかります。「Project PRIDE」では、従来のコンサルタント会社によく見られたマッチョな雰囲気やホモソーシャル(同質性の高い組織)文化、長時間労働、ハラスメントなど、女性活躍の障害になりそうな要素を徹底的に取り除こうとされていますね。そして働き方改革はコロナでさらに加速した。ただ、在宅勤務拡大などの改革をすると生産性が下がるという企業もあるようです。

【江川】アクセンチュア・ジャパンの業績は、現在も2桁成長を続けています。これはアクセンチュア全社の中でも突出しています。また、生産性も上がっているという実感があります。取り組みを始める前は二桁台だった退職率も、半減して一桁台になりました。