たとえば、『ウォール・ストリートジャーナル』紙の調査報道によれば、アマゾンは、同社通販サイトに出店する外部事業者2社の販売データを利用して、車のトランク用整理収納ケースの設計に反映したという。

問題は、その整理収納ケースの売上高の実に99.95%は「フォーテム」というブランドが生み出していたことである。

検索データに基づいて人気ブランドの類似品を安く提供

ここで読者にクイズを出そう。アマゾンのPB商品の整理収納ケースが最終的にどういうデザインになっただろうか。

「フォーテムの商品と同じ」と答えた方、お見事、大正解である。アマゾンが商品検索データを事実上、完全な支配下に置いている以上、アマゾンに出店する販売業者でなくても、カモにされる可能性がある。

次に、ジョーイ・ズウィリンジャーの話に耳を傾けてみよう。ズウィリンジャーは、ニュージーランド発のシューズメーカー、オールバーズの共同創業者である。素材にウールを使ったランニングシューズを手がけるユニークなブランドとして大成功を収め、販売は直販体制を採用している。

これだけの人気を誇るオールバーズだけに、アマゾンは寸分違わぬほどそっくりのデザインのシューズを開発した。さらに恥の上塗りと言うべきか、アマゾンはその類似品に1足35ドルも下回る価格を設定していたのである。

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ズウィリンジャーはあるインタビューで「アマゾンは消費者のことをよくわかっていて、アマゾンでたくさんのユーザーがオールバーズを検索していることも筒抜けだった」と指摘する。

「データからアルゴリズムではじき出したデザインでシューズを作ったからそっくりになったようだ。となれば、当然、オールバーズの需要に乗じて売ることも可能だ」

アマゾン包囲網ができる日はまだ遠い?

他にも公聴会では、アマゾンのスマートスピーカー「エコー」が原価割れの価格でダンピング販売されていて競合品の販売が阻害されていることや、ユーザーが音声指示で注文しようとすると同スピーカーの頭脳に当たるアレクサがアマゾンのPB商品を推奨する傾向が非常に強いといった指摘もあった。

アマゾンの労働条件や労働組合つぶしといった問題も報告されているが、公聴会では、そこを追及するまっとうな質問は見られなかった。実際、ベゾスが質問に応じた3時間のうち、明確な回答を避ける場面が多く、たびたび「引き続き調査する」と約束するにとどまっている。

ベゾスはアマゾンの影響力を懸念する声の広がりに、「当社が参入している小売市場は非常に規模が大きく、競争が激しい」としたうえで、「小売りには、いくつもの勝者を生み出す余地がある」と締め括った。