そもそもパレスチナ問題は、古くは第一次世界大戦中のイギリスによる「三枚舌外交」などを起源とし、第二次大戦後に国連の決議によってイスラエルが建国されたことに始まる。建国によって、1800年余りも離散の民だったユダヤ人が大量に入植した。これは欧米が勝手に決めた暴挙だと周辺のアラブ諸国は反発し、イスラエル国内のパレスチナ自治区を支援し、対立構造が顕在化した。

イスラエルは1948年の第一次中東戦争以降、周辺国と戦争するたびに国土を広げてきた。その軍事力は主にアメリカが支え、フランスの協力で核保有国にもなった。軍事的緊張は長年続いたが、93年にはイスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)の間でオスロ合意が成立し、国連で2国家共存が決議された。この合意で、テロリストで知られるPLOのアラファト議長が、ノーベル平和賞をもらったほどだ。

しかしアラファトの死後、ファタハ党のアッバス議長がリーダーとなるが、彼は誰からも信頼されない人物で、2006年の選挙でファタハは敗北。タリバンやISと同様にテロリスト集団と欧米諸国に呼ばれるハマスが過半数の議席をとり、今日に至る。ハマスはイランの支援で武器を製造しているが、威勢よく攻撃したかと思うとミサイル弾が尽きてきたら早々に和平交渉に応じるのが、毎度お得意のパターンだ。停戦中に元気を取り戻したら、また攻撃を仕掛けるだろう。

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こういった歴史があるから、建国当時と違って、今のイスラエル人はエルサレムを「安住の地」と見ていない。油断すれば周辺のアラブ諸国から攻撃される。できればアメリカなどへ渡って成功したいというのが、イスラエル人の本音なのだ。

ユダヤ人はもともと語学と理系に強いから、国外で成功することは難しいことではない。ユダヤ人の言葉はもともとヘブライ語だが、入植時にアメリカからイスラエルに帰った人は英語、ロシアから帰った人はロシア語と、外国語が得意な人たちが多い。ヘブライ語を共通言語としていたが、そのうち小学校から英語を学ぶようになった。これまで長期政権を維持してきたネタニヤフ前首相も、国民に語りかけるときはヘブライ語だが、英語のほうが実は得意であり、上手に使い分けていた。

敵に囲まれたイスラエルには国民皆兵制度があって、女性にも兵役が義務づけられている。しかし皆兵といっても、頭のいい連中は軍事訓練ではなく、実は事業計画を練っていいということになっている。除隊したらすぐに起業できるようになっているのだ。