そういうイスラエルの起業家の中には、実はパレスチナと仲良くしたい人たちが現れ始めている。イスラエル国内は優秀な人材ほど起業家志向で、他人の下で働きたがらない人ばかりだからだ。だから現実には、パレスチナ人の雇用の多くは、イスラエル人によって産み出されてきているのが実態だ。

コンピュータ言語も小学校から教わるからITに強いのは当然だ。グーグルやマイクロソフトなどが研究所を設置し、「中東のシリコンバレー」と呼ばれるほど理工系人材は豊富だ。ただ、自分で起業するにはいまひとつ資本が足りないから、資金調達ではシリコンバレーへ出かけることになる。イスラエル出身者が優れたアイデアを見せれば、起業の資金はすぐに集まる。たとえば、自動運転技術でエヌビディアと世界を二分するイスラエル企業モービルアイは、14年にニューヨーク証券取引所に上場するや時価総額は1.2兆円超。17年には、インテルが約1.7兆円で同社を買収した。

イスラエルでは、すでにスマホが運転免許証などのIDを兼ねている。デジタル先進国で名を上げている北欧のエストニアでは、スマホですべての公共サービスが受けられる電子政府が発達しているが、イスラエルでも政府はスマホを通して国民とつながっているのだ。国民のデータベースには、年齢、住所、学歴、職歴などの個人情報に加えて、健康診断のデータなどの医療情報も蓄積されている。

だから、コロナワクチンの接種でも、イスラエルの場合は「○月○日にここへ来い」とスマホに通知がくる。ワクチン接種が世界で最もスピーディーに進んだ理由は、このスマホセントリック(スマホ中心)な政府であることが最大の要因なのだ。イスラエル国内のコロナの新規感染者数は、すでに0人を記録するようになり、マスク着用義務も解除されている。

危機感、語学力、理系重視、スマホ中心

こうしたイスラエルの強み――「危機感」「語学力」「理系重視」「スマホセントリック」を同じように備えているのが台湾だ。

台湾人にも「明日のわが身はわからない」という危機意識がある。歴史的には、台湾(中華民国)は国連安保理常任理事国だったのに、1971年にキッシンジャーとニクソンの頭越し外交で中国(中華人民共和国)が常任理事国となり、台湾(中華民国)は国連から追放された。従ってパスポートが象徴的で、中華民国旅券で入国できる国が少ないから、台湾の人たちは中国(中華人民共和国)のほか、日本、イギリス、カナダなど他国のパスポートを所有していることが多い。