イスラエル、台湾の強みを見てくると、日本の将来が心配になってくる
また、台湾には51年から徴兵制があり、18歳以上の男子は兵役義務があった(18年からは志願制に移行)。中国の脅威に備えてアメリカから大量の武器を買ってきたのもイスラエルと同じだ。
台湾人もその危機感から、世界のどこでも生きていけるように早くから備えている。公用語は北京語だが若者の多くは英語に堪能だ。欧米の理工系大学や大学院に留学し、起業するケースも少なくない。シリコンバレーで起業した外国人起業家の人数は、インド人に次いで台湾人が2番目に多い。ヤフーの共同創業者ジェリー・ヤン、半導体大手エヌビディアの共同創業者ジェンスン・ファンなどはその代表だ。
台湾がITに強いのは、2020年に亡くなった李登輝元総統の功績だ。台湾が生き残るには技術力しかないと見抜いた李登輝は、70年代からハイテク企業を優遇し、新竹市にハイテク工業団地をつくった。そのプロジェクトでリーダーだったモリス・チャンは、87年にTSMCを創業し、世界で最も収益性が高い半導体メーカーの1つに育てあげた。TSMC以外にも、ホンハイやASUSなど、台湾からは成功企業が数多く生まれた。
また、李登輝は理系の大学院生を対象として、兵役義務の一環で「国防役」制度を設けた。これは理系の大学院生は軍事訓練の代わりに軍や政府の研究機関などに勤務するもので、事実上の兵役免除となり、厳しい軍事訓練は避けたいということで優秀な理系人材がたくさん育ったのだ。
スマホセントリックな政府という点でも、「コロナ感染者追跡アプリ」や「マスク在庫マップアプリ」を3日で作ってしまう「IT大臣」オードリー・タンの活躍が、日本でも注目を集めているとおりだ。
このようにイスラエル、台湾の強みを見てくると、日本の将来が心配になってくる。成長が鈍化し少子高齢化などの重大課題が数多くあるのに、日本政府は有効な対策を講じず危機感に乏しい。教育制度に関しても、20世紀型の古い学習指導要領を維持し、英語を話せない人、コンピュータ言語を駆使できない人を量産し続ける。21世紀は全員が理系の思考方法を身につけなくてはいけない、というのに高校2年から理系と文系に分け、7割が文系を選択する。そして、スマホの時代に今さら1人1台パソコンを配布する文科省の時代認識。コロナワクチン接種や10万円の定額給付金の案内だって、すべてスマホでなく郵送なのが日本だ。
人材の差は、そのまま国力の差になる。「危機感」「語学力」「理系重視」「スマホセントリック」が、日本の復活に欠かせないキーワードなのだ。