コロナ禍が後押し、いよいよ憲法改正へ

憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案が2021年5月11日、衆院本会議で自民、公明両党と立憲民主党、日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決された。

憲法改正を実現するには、衆参両院でそれぞれ3分の2以上の賛成で改正案を発議し、さらに国民投票で過半数の賛成を得る必要がある。国会では公明党ほか自民党シンパを合わせると、3分の2は確保できそうだから、国民投票法が成立すれば、憲法改正がいよいよ現実味をおびてくる。

改憲論者にとっては、現在のコロナ禍は最大の福音といっていい。いつまでもコロナの流行を抑えられないのは、日本国憲法に緊急事態条項がないせいで有効な感染拡大防止策が取れないのが原因であるとして、国民に憲法改正を訴えることができるからだ。

なぜ日本で緊急事態条項の必要性が説かれるのか。それには歴史的理由がある。明治憲法(大日本帝国憲法)には緊急事態条項があったが、悪名高い治安維持法の改正などで濫用されたため、戦後の日本国憲法では緊急事態条項が削除された。だから、私権制限を行うことについて、今の政府は慎重なのだ。しかしコロナ対策では、まん延防止のためには私権制限に踏み込まなければならないという現実に直面した。そこで、憲法改正で法的根拠を得たうえで、緊急事態に対して強制的な措置をとれるようにしたいというわけだ。