中国政府は「人から人への感染はない」とウソをついていた
WHO(世界保健機関)の年次総会が5月24日から6月1日までオンラインで開催された。新型コロナのパンデミック(地球規模の流行)対応についての検証内容が報告され、新たな感染症の大流行を食い止めるための「パンデミック条約」締結の議論もスタートした。
しかしながら、「元凶はすべて中国にある」と強く感じざるを得ないWHO総会となってしまった。
新型コロナが湖北省武漢(ウーハン)市で流行し始めた昨年1月初旬、中国当局は、「人から人への感染はしていない。死者も出ていない」と発表していた。
WHOのテドロス事務局長はこの発表を鵜呑みにして世界各国に伝えた。その結果、各国の初動の感染対策が遅れてパンデミックが起きた。つまり中国の隠蔽体質が新型コロナの世界的大流行を招いたことになる。
今回も中国の反対で「台湾のWHOへの参加」は実現せず
感染症は国境や地域に関係なく拡大していく。その意味で台湾がWHO総会に参加できないというのは、大きな問題だ。今回の総会でも台湾はオブザーバー参加を求め、いくつかの加盟国が総会の議題に入れるよう提案した。しかし、台湾の参加は認められなかった。
なぜか。「1つの中国」を主張する中国政府が「台湾は中国の一部で、中国を代表するのはわれわれだ」との考えを変えようとしないからである。台湾の参加は2017年以降、中国の強い反対で実現していない。加盟も中国の反対で認められていない。ひどい話だ。
WHOの年次総会の内容を具体的に見てみよう。
今回の総会では「パンデミック検証独立調査委員会」が最終報告書を提出し、WHOと加盟各国の初動の遅れを問題視した。そのうえで同委員会は緊急時にWHOが加盟国の承認を待たずに調査ができるようWHO自体の機能を強化することや、より多くのWHOの財源を確保する必要性を求めた。
パンデミック条約はイギリス、フランス、ドイツなど加盟25カ国の首脳とWHOのテドロス・アダノム事務局長が今年3月に締結を提唱したもので、新興・再興感染症が出現した際の情報共有とワクチン確保による国際連携の強化が目的である。総会でまずは11月の特別会合で論議することが決まった。
これまでWHO総会で採択された条約は2003年の「たばこ規制枠組み条約」だけ。それだけにこのパンデミック条約には大きな期待が集まっている。