東京では抗議ができるが、中国では抗議すらできない
6月4日、中国政府の武力弾圧によって多くの若者らが亡くなった天安門事件から32年目を迎えた。東京都港区の中国大使館前では「民主中国陣線」(本部・オーストラリア)の約50人のメンバーが抗議デモを行った。
民主中国陣線は事件後に中国から逃れた元学生らが作った民主化運動組織で、中国政府の武力弾圧や言論の封じ込めを非難し、民主化を求めている。この日は、「天安門虐殺を忘れるな 32周年抗議行動」と日本語で書いた横断幕を掲げ、「一党独裁をやめろ」と日本語と中国語で訴えていた。
中国は新疆ウイグル自治区や香港などの在り方について絶対に譲れない「核心的利益」とみなし、自治区では中国当局による少数民族へのジェノサイド(集団殺害)が国際的問題となっている。今回の民主中国陣線のデモには、少数民族のウイグル族のほか、チベット族、モンゴル族、それに民主派に対する強制的排除が進む香港の運動家も参加した。
一方、6月4日の天安門広場では、中国政府が周辺に多くの警察車両を配置し、制服姿の警察官と私服警官が市民行動に目を光らせており、抗議活動は見られなかった。
中国では市民の生命よりも共産党が優先される
北京市内と同様に香港市内でも、警察による抗議活動の警戒が行われた。毎年6月4日にはビクトリア公園での追悼集会が行われてきたが、今年は抗議を禁止するために約7000人の警察官が動員された。それでも4日夜には散発的に抗議活動が起き、民主派団体の数人が公安条例違反容疑などで逮捕された。
香港では民主主義と自由を求める学生や市民による大きな抗議デモが続き、昨年6月には中国政府の意を受けた香港政府の手によって民主派の活動を取り締まる国家安全維持法が施行され、国際的に認められていた一国二制度は壊滅した。
北京も香港も習近平(シー・チンピン)政権による民主化運動の封殺にさらされている。なぜ、ここまで厳しく市民や国民の行動を制限するのか。習近平国家主席は民主主義を恐れているのだ。
共産党一党独裁の中国では市民の生命よりも共産党が優先される。党に存在の価値があって国民には存在の価値がない。そこに民主主義による国民の自由が登場すると、共産党の権威がなくなる。党主席の絶対的地位を狙う習近平氏は、それが怖いのである。