中国政府「武力弾圧したからこそ、経済成長が軌道に乗った」

天安門事件は1989年に起きた。この年、民主化を求める学生たちは、連日、天安門広場に集まり、言論の自由の獲得や腐敗官僚の打倒を訴えた。デモ行進や座り込みは学生から知識人、労働者へと拡大し、デモの規模は100万人に膨れあがった。

中国政府は5月20日に北京市に戒厳令を敷き、6月3日夜から4日朝にかけ、天安門広場に軍の兵士や戦車を出動させて武力で強制的に排除した。実弾も発砲された。

中国政府は発砲を否定し、死者数を「319人」と発表した。しかし、2017年に公表されたイギリス外務省の公文書によれば、推計の死者数は1000人から3000人とされている。

今年7月に創設100年を迎える共産党は、天安門事件を「反革命暴乱」と位置づけている。今年6月3日の定例記者会見では「武力弾圧したからこそ、その後の経済成長が軌道に乗った。われわれの選んだ道は完璧に正しい」(外務省報道官)と強調している。

民主主義国家に生まれ、育ってきた私たち日本人からすると、驚くべき発言だ。だが、中国政府は本気でそう考えているのである。

天安門広場
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中国はアメリカを強く意識し、覇権争いに余念がない

アメリカのブリンケン国務長官は6月3日、次のような声明を出して中国政府に圧力を加えた。

「中国政府は対話を選ばず、暴力で応じた。あの事件での死者や行方不明者についての中国政府の説明責任を追及し続ける」
「天安門でかつて行われた学生たちのデモは、香港での民主主義と自由の獲得を目指す戦いに反映されている。天安門事件の犠牲者や、中国政府による弾圧に屈せずに活動を続ける市民に敬意を表する」
「アメリカは普遍的な人権を尊重するよう要求する中国の人々を支持し続ける」

中国は経済力、軍事力、そして宇宙開発に至るまで常にアメリカを強く意識し、覇権争いに余念がない。アメリカはそんな中国を国際会議で批判し、ときには軍事的行動も辞さない。

台湾も3日、対中政策を担当する大陸委員会が声明文を公表。香港などでの一連の中国政府の強権的行動に対して「国際的ルールから逸脱し、対外的な衝突のリスクを生み、地域の安定と安全に影響を与えている」としたうえで、「中国共産党が民主化への改革を実行し、人権と自由を保障してこそ、台湾と中国は尊重し合え、かつ理解し合える」と訴えている。