「まあいいや」と肩の力を抜いたほうがストレス耐性が高まる

私の見立てでは、受験勉強であれ、スポーツの世界であれ、ある時期までは完全主義を自らに課したほうが伸びる。だから、どの世界でもエリートの多くは完全主義者であり、「かくあるべし思考」が強い人が多い。

しかし、相対的に重い責任を負う仕事をしたり、実力レベルの高い世界に所属したりする人ほど、大坂さんや深田さんのように壁にぶち当たることが多い。その際、壁を乗り超えようと試みるのは立派なことだ。しかし現実問題としては、自分の能力の限界を自覚して、「これだけできているから、まあいいや」と肩の力を抜いたほうがストレスに対する耐性は強くなる。

そのほか、いろいろな決めつけや思い込みを持っていると、感じるストレスはより強まり、うつにもなりやすくなる。

「会社をクビになったら人生終わり」「この仕事ができなかったら自分はもうチャンスがない」などと決めつけていると、仕事のプレッシャーはどうしても高いものになる。

「会社をクビになっても、ほかに生きる道があるはず」「この仕事ができなくてもクビになるわけでない」……そうやって気楽にかまえたほうがうつにはなりにくい。

「人に頼ってはダメ」「人に泣きつけない」思考パターンは危うい

もう一つ、うつになりやすい思考パターンに、「人に頼ってはダメ」「人に泣きつけない」というものがある。

『VOGUE JAPAN』2021年8月号

ストレスに強い人間というのは、実は、素直に人に頼り、人に泣きつける人間である。与えられた仕事は自分には荷は重すぎて、どれだけ残業すればいいかわからない状況になったとき、「ちょっと僕には能力の限界だから」と、素直に人に助けを求めたり、泣きつけたりする人間であれば、少なくともつぶれることはない。

そこで人に頼ることで難局を乗り切った経験があれば、次からも素直に人に頼れるし、いろいろなストレス状況下でも生き残っていける。

ところが、人に頼るなんて情けない、どうせ誰も助けてくれない、という不適応な思考をもっていると、個人の限界を超えた仕事で、心がつぶれてしまうということがままある。

和田秀樹『ストレスの9割は「脳の錯覚」』(青春新書INTELLIGENCE)

大坂さんや、深田さんがその手の思考パターンにいたかどうかは、本人の診察をしたわけではないからわからない。

ただ、そうしたメンタリティーだったとすれば、周囲の期待が大きくなればなるほど、精神的なストレスは大きなものになるだろうし、うつ病や適応障害になったとしても不思議ではない。

少なくとも読者の皆さんは、この手の思考パターンに当てはまっていないか自問してそこから抜け出すことが精神的なサバイバルに役立つことは知っておいて損はない。

以上のような不適応思考とその対応法をまとめた『ストレスの9割は「脳の錯覚」』(青春新書INTELLIGENCE)という本を出したので、参考にしていただければ幸いである。

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