国が糖尿病をつくっている

先のように「多くの場合で薬は増えるし、治らない」という従来の標準治療の方針を決めたのは、いったい誰? というと、それは国です。つまり、「糖尿病とその予備軍2000万人」という現状をつくった責任の一端は、国にあるといえます。

たとえば、「日本人の食事摂取基準」は厚生労働省が公表している基準です(厚生労働省、日本人の食事摂取基準、2020年版

そこでは「エネルギー量」として「kcal(キロカロリー)/日」が採用されています。つまり、いまだに「カロリー理論」などという時代遅れの概念が採用されているわけです。人体では食べ物をとったときに「酵素的な代謝・消化」が行われているのに、「食べ物を燃やして水をどれだけ温めるか?」という見当違いの考えが使われています。

そして、この「日本人の食事摂取基準」は、保健施設や事業所、学校給食など、日本国内のあらゆる所で使われています。そして、糖尿病の標準治療で行われる食事指導でも採用されています。

しかし、エネルギーは「PFC量」でみるのが妥当だと私は考えています。Pはタンパク質、Fは脂質、Cは炭水化物もしくは糖質です。これらは、お互いに交換できず、互換性がほぼない栄養素です。

100kcalの肉、100kcalのバター、100kcalのパンは、同じカロリーですが、食べた後の人体での働きは全く違います。カロリーという見当違いな考えで乱暴にひとまとめにするのは、大きな間違いです。ナンセンスかつ、誤解を生みます。

食品表示も「~kcal」ではなく、「タンパク質~、脂質~、糖質~」と表示すべきだというのが、私の考えです。

PFC量での考え方が広まれば、こうした「間違いが判明した旧時代の考え」がいかに時代遅れなのかが、理解されていくでしょう。

「炭水化物6割」はどこからきたのか?

このように、国が公表している基準が古い考えのものだからといって、「国が全部悪い!」と言うのは間違いです。国が健康や医療に関して方針を決めるときには、それぞれの専門家を招集して「検討会」や「委員会」などをつくり、そこで方針をつくっていきます。もちろん、最終的に決めるのは、大臣や役職のある公務員ですが、その手前のところでは「専門家たち」が大きな影響力を持っているわけです。

たとえば前記の日本人の食事摂取基準の場合は、「日本人の食事摂取基準策定検討会」が報告書を作りますが、ほぼ、その報告書の通りに基準は決定されます。検討会のメンバーはほとんどが大学教授で、他には准教授や、大病院の病院長などの先生方が名を連ねています。

その専門家たちが、「炭水化物で全体の6割を摂取せよ」というエネルギー摂取を推奨してきました。最近になって、4~6割と、少しだけ糖質オフの方向にはなってきています。しかし、長年にわたる「炭水化物6割」の考えは、医療現場に深く根づいていますし、メディアでもそう喧伝されてきました。

この「炭水化物6割」が、肥満、糖尿病、メタボへの大きな影響を及ぼしてきたのです。

つまり、先の専門家たちが、その責任の重さを心する立場といえます。