糖尿病患者が増え続ける、一番の要因

治せない、薬がやめられない標準治療だけが、糖尿病人口の増加に影響したわけではありません。むしろ、標準治療を含めた治療は、病気になってからの話です。糖尿病人口が増えたのにはその他の要因があります。その一つが、ここまでにも何度もお伝えしたように、世の中に糖質があふれていることです。

テレビやSNSには、常に美味しそうなスイーツやスナック菓子、ラーメン、パスタなどの写真や映像が流れています。コンビニやスーパーへ行けば、それらの商品がずらりと陳列されています。思わず目が留まり、手に取り、買い物かごに入れてしまう、という経験は誰もがあることでしょう。

人間には「見たら欲しくなる」という性質があります。脳内では糖質を見ただけで、ドーパミンがドバドバ分泌され、「欲しくてたまらない!」と、なります。人間のこの性質を利用して、企業は日々、宣伝を行っています。マーケティングのプロたちが、あの手この手で買わせるための策を次々に打ち出してくるのですから、一度目にしたらまんまと乗せられる、と思っておきましょう。目にしないのが根本対策です。

そもそも、糖質は依存性の強い栄養です。購入するコストはさほど高くなく、摂取することである程度の満足が得られ、さらにまた欲しくなる。企業が売り上げを伸ばすには、格好の条件が揃っています。

こうした条件が揃う中、従来の標準治療は、糖質の摂取を止めるどころか、むしろ「とれとれ!」と言ってきました。従来治療の食事指導は「全エネルギーのうち6割は炭水化物からとりなさい」という内容になっています。血糖値を直接的に上げるのは、糖質だけです。それにもかかわらず、食事の半分以上を糖質にせよ、と指導しています。

糖質オフが普及した近年では、さすがに「スイーツやジュースは控えましょう」となってきましたが、まだその程度です。

公園でヨガのポーズをとる女性
写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです

妊娠糖尿病の入院食にスイーツが出されている

インスリン抵抗性が高まる妊娠中の場合、糖質過多な食事の影響は、さらに深刻になります。妊娠中は血糖値が高くなりやすいことは知られています。実際に、それまで問題がなかったのに、妊娠してから血糖値が上がりやすくなり、妊娠糖尿病と診断される妊婦さんも少なくありません。

ところが、妊娠糖尿病で入院中の妊婦さんには、血糖値を下げるためのインスリン注射が投与されると同時に、血糖値を上げるスイーツやお菓子などが出されています。間食として、クッキー、プリン、フルーツ、砂糖入りヨーグルト、パン、おにぎり、せんべいなど……中には、ミニカップラーメンが出る病院もあるといいます。

当然ながら、食事のたびに血糖値はガツンと上がります。そして、入院中なので「食べたかどうか?」の食事摂取量が病院のスタッフから毎食チェックされ、残すと苦言を呈されます。「食べることも治療のうちですよ」といった説明がなされます。そして、食べて血糖値がガツンと上がれば、インスリン注射を打たれます。そのようなことが積み重なり、妊娠中に大量のインスリン注射を打つと、巨大児や流産のリスクも高まります。

最近では、こうした治療を見直す医療機関も出てきましたが、いまだに、こうした従来治療の方針で提供される治療と入院食を行っている病院が多勢を占めています。

このように、生理的にも、社会的にも、経済的にも、「糖質過多の土台」ができあがっています。その結果、糖尿病になると、従来の標準治療によって「糖質を抜くな、しっかりとれ」という指導がなされます。

その指導に従い、糖質をとればとるほど、血糖値は上がり、薬は増えていくのです。