雑談するだけでこんなにも得をする
わたしの場合、雑談力のおかげでずいぶんと得をしてきたと思っています。わたしのオフィスのビルには、ロビーに受付とコーヒールームがあります。なにも特別なサービスをしてもらうことなどなくとも、そこにいる人たちと雑談を通して仲良くなって「安田さん、おはようございます」と声をかけてもらうと、1日の気分がまったくちがってきます。それがずっと続くわけですから、トータルで考えればかなりの得をしているといえませんか。
もうひとつ、例を出しましょう。以前わたしは、東京日本橋人形町のとある居酒屋に行きました。ちょっと格式が高めで一見客にはなかなか入りづらい老舗店です。その雰囲気に萎縮しながら食事をするのと、格式の高さをエンジョイして食事をするのでは、楽しめる度合いがまったくちがうものになるじゃないですか。そして、エンジョイするために必要なのが、雑談なのです。
女将と雑談をする。そうして、「この人はいいお客さんだ」と思ってもらえればしめたもの。その晩の女将のなかでのプライオリティーが上がって、料理の説明も丁寧になるし、お酒もオーダーすればすぐに出てくるようになる。それこそいいことずくめです。
話し上手な人は“聞き上手”である
しかも、雑談はコミュニケーションの初期段階ですから、その影響は今後にも影響を及ぼします。コミュニケーションを取ったということは、いってみれば女将とわたしはもう友人です。すると、次にその店を訪れたとき、女将からすればわたしはすでに「ウエルカム」の存在になっていることは間違いありません。そういう周囲からの「ウエルカム」を増やせば増やすほど、人生は充実したものになるのです。
とはいえ、話すことが苦手だという人もいるでしょう。それどころか、どんなに話し上手な人でも、気の利いたことや相手が思わず聞き入るようなことはなかなか話せるものではありません。では、雑談が上手な人はどうしているかというと、「話すことより聞くことを意識」しているのです。割合としては、「話す」が2、「聞く」が8というところでしょうか。
相手が話しているときは、「こういう話なら自分もちょっとおもしろいことを追加して話せる」というタイミングまで待つのです。そして、「うんうん」とうなずいて話を聞きながら、「この人が本当にしゃべりたいことはなんだろう?」「理解してもらいたいことってなんだろう?」と考える。きちんと相手の話を聞いて、そういう相手の願望を察知できたとしたらどうでしょう? 相手に好感を持ってもらうことができ、コミュニケーションのスタートとしてすごくいいものになるはずです。