そうした持病のない人の中にも、「病院でウイルス感染したら嫌だから」と、健康診断さえ受けないケースが続出しました。免疫力の落ちている透析の患者さんは、なおさら病院に行きたくないはずです。しかし、透析をサボれば死んでしまいます。だから、危険をおかしてでも透析に通わざるを得なかったのです。

医療施設側も、そういう事情はよく理解しており、透析の患者さんを受け入れている病棟では厳重な注意を払っていることでしょう。それでも、2021年3月26日16時現在のデータで、1356人の透析患者さんが新型コロナウイルスに感染しています(日本透析医会・日本透析医学会・日本腎臓学会、新型コロナウイルス感染対策合同委員会「透析患者における累積の新型コロナウイルス感染者の登録数」)。

高血圧と動脈硬化が腎臓の機能をダメにする

現在、日本には4300万人の高血圧患者がいると推定されています。とくに男性の場合、30代で5人に1人、40代になると3人に1人、70歳以上ともなると60%が高血圧です。つまり、加齢とともに高血圧になるのは当たり前のような状況にあります。

しかも、4300万人もいる高血圧患者のうち、3分の1は自覚がないために治療しておらず、1割以上が自覚しているけれど未治療です。

治療している人の中でも、コントロールが良いのは27%にすぎません。高血圧自体は、よほど重症にならない限り自覚症状はありませんし、それによって動脈硬化が進行しても痛くもかゆくもありません。だから、真剣に治療を受けようという気にならないのかもしれません。

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しかし、高血圧は、人々が考えているよりもはるかにリスキーです。ビル&メリンダ・ゲイツ財団(マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏とその妻が設立した慈善団体)によって進められた研究では、世界中の人が命を落とす最大の原因は高血圧にあるという結果が出ています。

高血圧で腎臓の血管の動脈硬化が進む

高血圧が命に関わると聞いて、すぐに思い浮かぶのが心筋梗塞や脳卒中でしょう。でも、最も問題なのは慢性腎臓病です。そのメカニズムを説明しましょう。

高血圧によって、腎臓の血管も動脈硬化が進みます。腎臓の血管は細いので、動脈硬化による影響を受けやすく、腎臓の機能がどんどん落ちていきます。

一方で、腎臓の機能が落ちると、塩分と水分の排泄はいせつ調整がうまくいかなくなり、血圧が上がります。これを「腎性高血圧」といって、これまで血圧が低めだった人ですら、慢性腎臓病が進んでステージ分類で3以上になると血圧が上がります。

そして、ステージ4(血清クレアチニン値が正常値を超えて腎不全になった状態)ともなれば、血圧は猛烈に上昇して、大量の降圧剤を飲まないとコントロールできなくなります。

つまりは、血圧と腎機能は明確にリンクしており、血圧をコントロールすることが腎臓を守ることに直結するのです。

なお、慢性腎臓病のステージの詳細については、拙著『医者が教える最強の解毒術』(プレジデント社)でも紹介していますし、インターネットで検索していただければすぐわかります。