患者数が2100万人を超えて糖尿病以上に多くなっている「新・国民病」がある。「慢性腎臓病(CKD)」だ。発症すると様々な病気の死亡率が平均4倍に上昇し、新型コロナをはじめウイルス感染症の悪化リスクも高まる。一度人工透析になれば、一生やめられない。「実は、人間ドックや健康診断では予兆を捉えることができないのです。働き盛り世代は一刻も早く対策が必要」と、20万人の患者を診た牧田善二医師が警鐘を鳴らす──。(第2回/全6回)

※本稿は、牧田善二『医者が教える最強の解毒術』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

なぜ糖尿病専門医が誰よりも腎臓病に詳しいのか?

私は糖尿病専門医ですが、単に糖尿病だけを診ているのではありません。自分の患者さんが「死なない、ぼけない」ために、あらゆる角度からフォローをしています。

糖尿病の治療にあたっては、血糖値のコントロールよりもはるかに重視しているのが合併症の腎症予防です。モットーは、「自分の患者さんを透析にだけはしない」。だから私は、腎臓内科医ではないけれど腎臓にとても詳しいのです。

私は、北海道大学医学部を卒業し、当時はまだ患者さんも少なかった糖尿病を専門に研究していく道を選びました。その当時から、「糖尿病で大事なのは合併症の腎症であり、それが治せるようになれば問題は解決する」と考えていました。

中でも、腎臓病を発症・悪化させるAGEエージーイー:終末糖化産物」という老化促進物質に注目し、アメリカのロックフェラー大学などで、5年間、研究に没頭しました。

コロナウイルス
写真=iStock.com/oonal
※写真はイメージです

40年間、腎臓とAGE研究に没頭

その間、「絶対に不可能だ」といわれていた血中AGE値の測定に世界ではじめて成功。その研究内容について「The New England Journal of Medicine」「THE LANCET」「SCIENCE」などの一流医学誌に、第一著者として論文を掲載してきました。

以後、40年間の糖尿病専門医としての年月は、ほぼ腎臓およびAGEの研究にあててきたと言っても過言ではありません。

そんな私が、ここ数年「糖尿病の合併症に限らず、大変なことになっている」と強い危機感を抱いているのが慢性腎臓病の激増なのです。

せっかく100歳まで生きられる可能性を手にしながら、このままでは多くの人にとって夢で終わることになりかねません。