慢性腎臓病になると重篤な病に罹りやすく、悪化しやすい

厚生労働省の発表(2019年)によれば、今、日本人の死因の第1位はがん、第2位は心疾患です。第3位老衰、第4位脳血管疾患しっかん、第5位肺炎、第6位誤嚥ごえん性肺炎、第7位不慮の事故と続いて、第8位に腎不全が入ります。腎不全とは、すなわち腎臓が機能しなくなることです。

この死亡原因の第8位という順位を、あなたはどう捉えたでしょうか。

「腎臓って、意外と重要なところにいるんだな」と感じるか、「8位ならたいしたことはないな」と思うかは、人それぞれでしょう。

しかし、8位という数字が示すよりも、慢性腎臓病ははるかにタチが悪いのです。

慢性腎臓病があると、心筋梗塞しんきんこうそく、脳卒中、がんなどさまざまな病気にかかりやすくなることや、その進行・悪化を早めることがわかっています。

つまり、慢性腎臓病がある人は、腎不全で亡くなる以前に、心筋梗塞や脳卒中、がんなど、ほかの病気に罹り、その病気が進行して亡くなった可能性が高いと考えられるのです。単純に表面に現れた数字だけで判断することはできません。

新型コロナの死亡率も6倍に上昇

実際に、慢性腎臓病になると、死亡率が平均で4倍に上がることがわかっています。

この死亡率は慢性腎臓病が重症になるほど高くなり、最大で5.9倍にまでアップします。慢性腎臓病に罹ることは、治療法がわかってきたがんに罹るよりもむしろ恐ろしいといえるのです。

また、慢性腎臓病は、感染症による死亡・重症化リスクもね上げます。

世界中を震撼させた新型コロナウイルスの流行では、感染してもまったく症状がない人やごく軽症で済む人がいる一方で、あっという間に亡くなる人もいます。

そのリスク因子として「高齢」「持病」が指摘されましたが、持病の最たるものは慢性腎臓病でしょう。ただ、高血圧や糖尿病のように自覚できておらず、患者さんからの病名申告は実情よりも少なかったかもしれません。しかし、実は慢性腎臓病をわずらっていて、それにより重症化し、命を落とした人が多いのです。

とくに、慢性腎臓病で透析を行っている人の新型コロナウイルス感染による死亡率は一般の人よりなんと6倍も高いと報告されています(第63回日本腎臓学会総会・特別シンポジウム)。