「仕事終わりを機嫌よく」を目標にしたら起きたこと

それで去年は、「良い夕方を過ごそう」というのを目標にしました。それまではホワイトボードに「今日やること」というのを書いて、終わったら消していくようにしていたんです。そうしたら、終わってないことが残るんですよね。気持ち悪い夕方になっちゃうんです。

ホワイトボードにマグネットシートを貼って、直近10日間分の予定を見える化。天候などに合わせて、頻繁に優先順位を入れ替えている。(写真提供=萩原さん)

目標を「良い夕方を過ごそう」にしたら、スタッフの子たちが工夫してくれて、「やること」を全部マグネットシールにして、終わったら「今日終わったこと」というところに移動するようにしてくれたんです。そうすると、終わっていないことが2個くらい残っていても、「12個も終わったから、今日はバッチリだね。お疲れ!」って、なるんですよね(笑)。テーマを掲げることで、みんなが良い仕組みを考えてくれました。機械投資なんかも含めて完全に「良い夕方を過ごす」に注力して、去年はそれで1000万使っちゃいましたけどね(笑)。

畑もチームも4段階の最初のステージが大事

【長尾】萩原さんは、畑を4段階で捉えているんですね。実は僕、4段階オタクなんです(笑)。

【萩原】なんですか、4段階オタクって(笑)。

【長尾】これは僕の本に登場する「チームの成長ステージ」の図表です。集団や組織が4つの段階で成長していくというモデルで、もともとは社会学者のブルース・タックマンという人が1960年代の後半に唱えた説に、僕が加筆修正したものです。

資料提供=長尾 彰さん

この4段階が、萩原さんが話された畑の4段階とよく似てるなぁと思うんです。

第1のステージは「フォーミング(同調期)」というステージで、集団が形作られる時期です。ここはとにかく「ご機嫌になる」ということが大事で、この表では「心理的安全性」という専門用語を使っていますけど、何を言っても怒られないという関係性を作ることがとにかく大事。これが土台になります。

これさえできちゃえば、勝手に第2ステージ「ストーミング(混沌期)」が始まるんですよ。いろいろな試行錯誤が始まって混沌とする「菌の世界」です。よくわからないうちに何かが進んで、うまく行けば“発酵”するし、うまく行かなかったら“腐敗”してしまう。

さっきのマグネットシートの話も、きっと試行錯誤があったはずなんですよね。「どういうやり方にする?」「ああいうやり方は?」って。グダグダ話しているところに萩原さんが「それじゃダメだろ」って言ったら場が冷えちゃって“ふかふか”じゃなくなっちゃうから、また第1ステージに戻っちゃう。

でも、いろんな試行錯誤をして「これ、やってみよう」ということができると、「これがいいね」と決まっていく。そこからさらに、マグネットを貼るのを当番でやろうとか、萩原さんが「こうしなさい」って言わなくても、自分たちで自分たちのことをし始めるのが、第3ステージ「ノーミング(調和期)」のイメージです。

第4ステージにいくチームはほとんどない

第4ステージ「トランスフォーミング(変態期)」になると、もう阿吽あうんの呼吸で動ける感じですが、ここまで行くチームってまずないんです。この段階は、ワールドカップで1位になるとか、これまで誰もなし得なかった偉業を達成するとか、そういうレベルなんですね。こうやって4段階を見せると、みんな第4ステージを目指したくなっちゃうんですけど、一番大事なのは第1ステージで、“ふかふか”にしておくこと。心理的安全な状態を作っておくことを忘れちゃいけないんですよね。このあたり、畑を作ることと似てますよね。

【萩原】本当ですね。