一見仕事ができそうでも周囲に悪影響な人

【萩原】あと、“アレロパシー”っていう言葉があるんですけど……

【長尾】アレロパシー?

【萩原】植物が出す物質の中で、他の植物の成長を抑えるようなもののことです。この辺だとブタクサがそうなんですけど、あれはひどくて……。根から出す物質で他の植物がやられるので、独り勝ちして2メートルを超えるような雑草になっちゃう。

一見仕事ができそうな人でも、周りに良くない影響を及ぼすような人っているでしょう? そういうことが起きそうなときは、「他の人の成長を妨げるようなアレロパシー出すのは良くないよね」なんてことを最初に言っておくと、ちょっと抑えられたりします(笑)。

【長尾】スタッフみんなに意味が共有されている言葉だから、人や組織にも当てはめて使えるわけですね。

一般的にも、「芽が出る」とか「根を伸ばす」とか、畑のメタファーってよく使われますよね。畑で作物が育つプロセスと人が育つプロセスって、共通するところがいっぱいあるんじゃないかと思います。そこで萩原さんにお伺いしたいのが、「良い畑の条件てなんですか?」ということです。野菜が育つ、あるいは人が育つ畑って、どんな畑ですか?

「みんな機嫌がいい」が実現できれば、大体うまくいく

【萩原】まず良い作物が育つ畑について言うと、僕は4段階で考えています。一番下の土台が「ふかふか系」の土。これが大前提になります。その上に「菌や生物の世界」があって、その上にミネラルや肥料とかの「化学性の世界」があって、最後に「その他の因子」が乗っかっているイメージです。

僕は畑の土壌分析をして、それぞれの作物に合った土作りをしています。でも、土壌分析で見ているのは3番目の「化学性の世界」だけなんですよ。昔はここにハマって、ここばっかりをいじっていたんですけど、1番目と2番目も良くしないとどれだけ頑張ってもダメなんですよね。

作物ごとに最適な土作りをして栄養価の高い野菜を育てるのらくら農場では、土や肥料の話をするときに元素記号を用いる。
作物ごとに最適な土作りをして栄養価の高い野菜を育てるのらくら農場では、土や肥料の話をするときに元素記号を用いる。(写真提供=萩原さん)

これは農場のチームも同じで、土が“ふかふか”なのが大事なように、土台になるのは柔らかい雰囲気なんですよね。ひとことで言えば「機嫌がいい」ということです。スキルみたいなものはその上に乗る「化学性」のところの話で、極端な話、「みんな機嫌がいい」ができていれば大体うまくいくんじゃないかな。

もちろん、経営していく上での資金繰りだとかコストの管理なんかは、経営者である僕の役割です。でも、「経営が回る」と「仕事が回る」は別だなと、一昨年くらいに気づきました。スタッフのみんなにとっては経営がどうかということよりも、今日の仕事が気持ちよく終わったかどうかがすごく大事なんだなと。