浮き彫りなった「アジア系」「女性」の二重差別

アトランタ銃撃が起こった時、利佳さんは心が壊れた気持ちがしたという。その最大の理由は、アトランタの白人保安官が事件直後の会見で、21歳の容疑者をかばうような言い方をしたことだ。

事件を起こした理由に触れた時、「彼にとっては散々な1日だったようだ」と驚くほどカジュアルな言い方をしたのだ。犠牲者がもし白人ばかりだったら決してこんな言い方はしなかっただろう。マッサージ店で働くアジア系女性6人を含む8人の命はそれほど軽いのか?

さらに彼は「容疑者はセックス依存症で、その原因と考えた女性を除去しようとした」

つまり女性に対するものだからアジア系へのヘイトクライムではないという。しかしここで明らかになったのは、彼がアジア系女性をセックスの対象として見ていたということで、これは残念ながらアメリカ社会の中ではあまりにも共通の認識だ。

アジア系の女性はエキゾチック、しかもおとなしく従順というのは、アメリカが戦ってきたアジア圏での戦争から、ハリウッド映画などで増幅された最もネガティブなステレオタイプだからだ。

アトランタ銃撃は、アジア系女性というステレオタイプに基づく憎悪が理由で、明らかなヘイトクライムとして捜査すべきという声が激しく上がっているが、アトランタ市警はいまだにそれと認めていない。

なぜ、今年に入って急増しているのか

アジア系へのヘイトクライムが急増したのは、これまで意識下でくすぶっていた差別感情が、トランプ氏によって刺激され表面化したのが原因とされる。さらに差別自体をタブーではないと考え、BLMに反感を持つ人が増えたのも、議会襲撃をはじめ白人至上主義者の活動が活発になったことから容易に推測できる。

だが、今年に入って急にヘイトクライムが再び増えているのはなぜだろう? トランプ氏が原因なら、彼が去ったのに減るはずはないと思うかもしれない。

筆者撮影

一つ考えられるのは、1年を超えるパンデミックで経済的にも精神的にも追い詰められた人が多く、その鬱憤うっぷんが弱くおとなしいイメージのアジア系にぶつけられているということだ。

さらには、これまでも同様の犯罪が頻繁に起こっていたのに、きちんとカウントされず報道もされていなかったのではないかという疑念もある。ヘイトクライム自体を犯罪として立証するのは難しい。犯行時にそれと分かる言葉を発しているなど、加害者がはっきりとヘイトを持っていたことが証明されなければならない。