米副大統領にカマラ・ハリス氏が就任した。インド人の母を持つ「初のアジア人女性副大統領」だが、強調されるのは「ジャマイカ出身で黒人の父」のほうだ。ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院講師で医師、柏木哲氏は「黒人と同様に、アジア人もマイノリティーだが世間の目は冷たい。背景には1965年以降の移民政策の変更で根付いたアジア人への固定観念がある」という――。
次期副大統領カマラ・ハリスの出自と人種問題
2020年11月7日、「バイデン当確」のニュースが流れた翌日、ボストンのダウンタウンはどこからともなく集った人で祝福ムードに包まれた。次期副大統領となったカマラ・ハリスは、“Woman of color”としては初めての選出ということもあり、これに勇気付けられた非白人の参加者が多かった。
ハリスはジャマイカ人の父とインド人の母の間に生まれた。ジャマイカ人はほとんどがスペイン統治時代にアフリカから連れてこられた黒人奴隷の子孫であり、インドは南アジアなのでハリスは黒人とアジア人の混血ということになる。
ただし、彼女が副大統領候補に選ばれた8月11日付のNew York TimesまたはAssociated Pressは最初の「黒人女性」であると伝えており、「アジア人」への言及はない。今までアジア人女性の副大統領もいないので、「最初のアジア人女性」でもあるのだが、こちらの方はあまり歓心を買わないようである。
ハリス自身も黒人の血筋を一貫して強調しており、2019年6月27日の民主党予備選のディベートで、人種統合政策の一環として白人のクラスにたった1人の「黒人」としてバスで送迎されていた小学校時代の経験について語っている。
この発言は相次ぐ警官による黒人殺害事件に端を発した人種差別問題が盛り上がりを見せる中で今回の大統領選のハイライトの一つとなった。ハリスの選挙事務所ではこの発言にちなんだTシャツが販売されたほどである。同じく民主党から立候補した台湾系のアンドリュー・ヤンがアジア系を自身のアイデンティティーとしていたのと一線を画している。