財閥系大手企業は好調だが…
2020年、韓国経済はそれなりの底堅さを示した。企業業績を見ると、半導体やスマホ大手のサムスン電子やLG電子など財閥系大手企業の業績は比較的好調だ。また、造船業界も健闘している。しかし、韓国経済をより深く分析すると、いくつかの重要な問題を抱えている。楽観できないだろう。特に、首都圏における不動産価格の高騰と、若年層を中心とする雇用・所得環境の悪化は深刻だ。
これまでの文在寅(ムン・ジェイン)大統領の経済運営は、最低賃金の大幅引き上げなどを見ても期待されたほどの効果を上げてはいない。その結果、大手の財閥系企業とそれ以外の経済格差が拡大している。経済格差が固定化すると、人々が自助努力によって能力の向上を目指し、新しいことに挑戦することは難しくなる。
そうした将来への不安の高まりは、文大統領の支持率を低下させた要因の一つだ。今後、コロナ禍で世界経済の回復が遅れるようだと、韓国の経済状況はさらに深刻化する懸念が高まる。足許では、新型コロナウイルスの感染再拡大が韓国の労働市場を下押ししている。
他方、当面の間、首都圏の不動産価格は上昇基調を保つ可能性がある。景気先行きへの不安や経済格差への不満など、文政権下の韓国では社会と経済の閉塞感がこれまで以上に高まる恐れがある。
上昇を続ける不動産価格
マンションを中心とする首都圏の不動産価格高騰は、韓国経済の不安定感を高める要因の一つだ。その背景には“カネ余り”と“価格上昇への強い期待”がある。
2017年5月に文政権が発足して以降、韓国銀行(中央銀行)は2017年11月と2018年11月に小幅な利上げを実施したが、大幅な長期金利の上昇は避けられた。2019年に入ると米中通商摩擦による景気減速リスクを理由に段階的な利下げが行われた。それが過剰流動性=カネ余りを生んだ。
2020年春先にはコロナショックによって世界の経済と金融市場が混乱。2月から3月中旬にかけて韓国から海外に、資金が急速に流出した。その状況を食い止め韓国経済の持ち直しを支えたのが米FRB(連邦準備理事会)のドル資金供給だ。それに加えて韓国銀行も金融緩和を強化し過剰流動性は膨らんだ。