近年、アメリカのビジネススクールで、日本人が減り、中国人が増えている。自身もスタンフォード大学でMBAを取得した経営共創基盤(IGPI)会長の冨山和彦さんは「日本人の優等生は人生に挫折がなく、面白みがない。だから落とされてしまう。若いうちに挫折を経験しておいたほうがいい」という——。

※本稿は、冨山和彦『リーダーの「挫折力」』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

スタンフォード大学
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シリコンバレーでは失敗は「ポジティヴ」

挫折体験がもたらしてくれる効能について、ちょっと意外なものを一つご紹介しよう。それは、「挫折があなたの経歴を彩ってくれる」ということだ。

挫折は、日本では恥ずべき体験、隠してしまいたい体験と思われがちだ。履歴書を書くときにも、できるだけ挫折を隠そうとする人がいる。大学受験の浪人経験くらいなら履歴書に当たり前に書けるが、留年になると書きにくい。その後、破産経験やリストラで無職時代があったとかは、ますます書きにくい。

だが、挫折体験は実は、抹消すべきものとは限らない。やがて日本でも、挫折体験は尊ばれ、履歴書の核にさえなる日が来るだろう。少なくともアメリカのシリコンバレーでは、立ち上げたベンチャーが潰れたとか、そのせいで自己破産したとかは、明らかに職歴としてはポジティヴな項目である。それが若い時期のものならなおさらである。

アメリカのビジネススクールで日本人留学生が減っている

アメリカのビジネススクールにおいて、日本人留学生の存在感がすっかり薄れてしまって久しい。かわりに台頭してきているのが中国人である。元々受験者が多いということもあるが、中国人受験者との受験競争に敗れ、入学できる日本人留学生が少なくなってしまっているということも大きな要因だ。

では、どこで差がつくのか。思考能力や知識レベルには大差はない。一番の違いは「日本人受験者の経歴がつまらない」ことにあるのだ。