挫折を評価しない会社には転職するべきではない

今後、ますます増えるであろう転職マーケットでも同じことがいえる。当たり前の経歴、当たり前の高学歴は、引っかかりがないのでおそらく書類審査ではねられる。やはり目立ってナンボの時代である。

挫折は、決して恥ずかしく、抹消すべき体験ではない。それを乗り越えた自分を描けるなら、履歴書の核になる。私は再生機構において、親から継承した旅館が倒産して、自らも自己破産した若者を採用している。彼は再生機構で自らの挫折経験を活かし、ホテル、旅館再生のエースとなった。今は自分で起業して日本中のホテル、旅館の再生に奔走している。

挫折経験を重んじるのはあくまで欧米のビジネススクールの話で、日本企業へ転職する際には通用しない、と考えるかもしれない。だが、挫折経験を書いた履歴書を拒むような人事担当者がいるような企業には、そもそも行かないほうがいい。

そうした会社はおそらく全社的に優等生組織であり、こうした組織は早晩、危ういことになる。受からなくてよかったと喜んだほうがいいのだ。

20代、30代で挫折していない人は危機的状況

かつて日本が高度経済成長を遂げていた時代は、大きな挫折というものはそうそうなかった。皆がそれなりに引き上げてもらい、成功らしきものを手に入れられた。

当人からすれば過酷なノルマに追われ、上司から強い圧迫を受け、ストレスだらけの日々だったかもしれないが、私にいわせれば、それは大したストレスではない。別に命や財産を失うわけではなく、せいぜい左遷させられるくらいだ。その意味でかつての日本は、ストレス耐性がなくても何とかなる社会だった。

だが、今の日本は違う。どこにいても挫折のリスクはつきまとう。数年後に自分の会社があるかどうかわからず、残っていてもリストラにあう可能性もある。大企業にいてもお役所にいても、自分が定年まで勤められる保証などない。順風満帆だったビジネスが、急激な環境変化で1年後には頓挫していることもある。確かなものはどこにもなく、どこにいても何をしても挫折を経験する可能性は高い。

ベンチに座っている落ち込んだアジアの実業家
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このとき致命的なのは、40代後半や50代になってカタストロフィ(大惨事、破局)に見舞われることだ。すでに結婚し、子どもも大きくなり始め、家のローンはまだまだ残っている、子どもの学費も捻出しなければならない。そんな身動きのできない時代に大きなカタストロフィに見舞われては一大事だ。