リベラル向けの安全保障戦略が政権交代を遠ざけている

日本には米国ほど急進的ではないが十分な社会リベラルが存在する。しかし、安全保障における価値観の対立が激しいがゆえに、立憲民主党をはじめ野党はどんなに目標を掲げても社会リベラル(図表2の下半分のリベラルおよび自由主義の層)を取り切れないのである。

三浦瑠麗『日本の分断 私たちの民主主義の未来について』(文春新書)

彼らが票を集めきれない理由としては、野党の実務能力に関する疑いも混じっているだろうが、そもそも年金問題は投票の主要な動機ではなかったというところから議論をスタートさせなければ、選挙結果を適切に把握できない。

立憲民主党は、外交安全保障で中道リアリズム寄りの票も一部取り込めてはいるが、それは最大野党として政権批判の受け皿になっているからだろう。しかし、現実には選挙活動の場において、演説や支持者のプラカードに、日米同盟に対する懐疑的な表現や「憲法改悪反対」と言った表現が躍ることで、安全保障リアリストの有権者を遠ざける効果を作り出している。

安全保障で価値観が分かれることが正しいとか間違っているとかいうことではない。現実問題として外交安保リアリズムをとる人が国民の多数を占めるため、安全保障でリベラル票を惹きつける戦略を維持する限りは、政権交代は難しいということである。

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