「このまま住み続けるのは危ない」

「このまま住み続けるのは危ない、日本人在住者は退避を考えるべきだ」

ミャンマーで2月1日に国軍によるクーデターが起きて以来、SNSを使って情報を配信し続けている在ミャンマー日本人の中からついにそんな声が上がっている。

ミャンマーのヤンゴン郊外で、ブロックを燃やされたデモ参加者と住民が新しい道路ブロックを作る様子
写真=EPA/時事通信フォト
ミャンマーのヤンゴン郊外で、ブロックを燃やされたデモ参加者と住民が新しい道路ブロックを作る様子=2021年3月14日

ミャンマーのクーデターをめぐっては、デモは徹底的な非暴力を貫いているが、抗議デモ隊の規模は大きく、国軍や警察は排除に手を焼いている。

デモの「沈静化」を目指し、2月28日ごろから国軍や警察はデモ隊に向け実弾を発砲し、暴力的な弾圧を実施。当局は3月15日、ついにヤンゴン市内の一部に戒厳令を発令。これにより、軍の司令官に行政権及び司法権が委譲され、憲法の拘束を受けることなく民衆の取り締まりができることとなってしまった。

そんな中、ミャンマー最大都市ヤンゴンで在住日本人が住むマンションに催涙弾が撃ち込まれるという事態が起きた。

ガラスが飛び散り、シャワールームへ避難

「窓の外が騒がしかったので、外の様子を眺めたんです。そうしたら軍隊がいたのでスマホで撮影して、その後ビデオカメラを回したんです。次の瞬間、シューって音が聞こえて。そうこうしているうちに金属製の筒状をした催涙弾がガラス窓を突き破って居間に飛び込んできた」

国軍が新町さん宅に放った催涙弾。窓ガラスが飛び散り、催涙弾の残骸が転がっている
写真提供=新町智哉
国軍が新町さん宅に放った催涙弾。窓ガラスが飛び散り、催涙弾の残骸が転がっている

7年前からミャンマーに移住し、現地で映像制作やイベント運営のエンタメ関係の仕事に携わる新町智哉さん(42)は当時のことをそう語る。

「催涙弾そのものには当たらずに済んだんです。しかし、家中に催涙ガスが蔓延まんえんしてしまい、シャワールームでかがんで必死に息を吸いました。その間、兵士が自宅に押し入ってくるかも、と恐怖に怯えていました。催涙弾が玄関前に着弾したので、ガスが充満してしまい、外にも出られませんでした」

幸いにも国軍兵士の突入はなかったが、ガスが充満したのと、ガラスが飛び散るなど家のあちこちが破損、「とても住める場所ではなくなった(新町さん)」。やむなく被害後は、知り合いの家に身を寄せているという。

見せしめのような殺害行為も

「あとでマンションの住人から『軍がいる時に外なんか撮ったらダメ』と言われた。やはり自分が狙われたのだろうか」。国軍にとっては脅しかもしれないが、一般市民の住宅に向けて撃ってくるのは、異常な行為と断罪できよう。

SNS上には、国軍が民間人に発砲する「蛮行」の様子を示すさまざまな動画がアップされている。中でもひどいのは「発砲を嫌がる警官を軍人が脅して、民間人を撃つよう命令する」様子を映したものだ。BBCが3月15日に伝えたところによると、抗議デモ開始以降、ミャンマー全土で少なくとも120人以上が死亡したという。