コンプレックスの開示が笑いに変わる場合と凍りつく場合
例をあげましょう。会社に体脂肪率30パーセント以上、体重は100キログラム近くにもかかわらず、身長は170センチメートルない程度の部長がいたとします。明らかに不健康そうな感じです。部長とチームメンバーとの飲みの場で、服の話になりました。
【田中】「課長、今日のスーツもかっこいいですね!」
【鈴木課長】「またまた~。お世辞がうまいんだから!」
【田中】「お世辞じゃないですって! 本当ですよ」
【部長】「鈴木くん(課長)は、スラットしてて何を着ても映えるからね」
【田中】「部長も体格がいいのでスーツ姿が決まっててかっこいいです」
【部長】「いや、僕はデブだからね……」
【一同】「……」
「体格がいい」といったとき「デブだから」と返した部長の顔が、どこか悲しい顔だったらいかがでしょうか。周囲が笑いに変わる場合と凍りつく場合の分かれ道は、本人がコンプレックスを乗り越えられているかどうかなのです。
本心でプラスに物事を変えられていない場合は、喋り方や目の動きに陰が残っています。相手は、無意識にそれを察して、反応し辛くなってしまいます。
コンプレックスの昇華は、ポジティブに生きることにもつながる
コンプレックスを昇華させることは、ポジティブに生きることにもつながります。心理学者・行動経済学者のダニエル・カーネマン氏は「ピーク・エンドの法則」を提唱しています。これは、最も感情が動いたとき(ピーク)と、一連の出来事が終わった後の(エンド)の記憶だけで、その経験についての全体の印象が決定づけられるというものです。
お笑い芸人をあきらめて、営業職になりたてのころは、全く案件を受注できない日々をすごしていました。しかし、提案書を突き返されるなかで、「中北さんと一緒に組織を変えてみたい」という言葉もいただくようになり、顧客から感謝状を贈られるようになったのです。
「終わり良ければ全てよし」という言葉もありますが、今の私の中で、営業職として働いた日々はプラスになり、自分の自信に変わっています。