どうすればセールストークは成功するのか。みずほ銀行顧問の中澤豊氏は「機能や価格を説明して、相手を説得しようとしてはいけない。必要なのは論理によって説得することではなく、相手に納得してもらうこと。ユーモアのある例え話を使うことで相手を納得させることで、セールストークを成功に導くことができる」という――。

※本稿は、中澤豊『マクルーハン・プレイ アイデアはこうして生まれる』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

説明しているビジネスパーソン
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議論にありがちな「誤った前提」

現代社会は「論理」によって成り立っています。論理は理性的であり、感情に惑わされず正しい判断に人を導くと考えられています。

ですが、「論理的に正しい」ことと「経験的に正しい」ことは違います。例えば、

前提一:すべての人間は死なない
前提二:ソクラテスは人間である
結論:ゆえにソクラテスは死なない

これは論理的には正しいですが、前提を間違えていることがすぐ分かります。その結果、結論も間違えています。つまり、この論法は前提を間違えたら崩壊します。一歩間違うと、論理的に正しいため間違えていることに気づかないまま結論を迎えてしまう危険性があるのです。例えば、この例はどうでしょう。

前提1:このサービスはアメリカで流行っている
前提2:アメリカで流行ったものは2、3年後日本でも流行る
結論:このサービスは日本でも成功する

これは、前提1も前提2も、正しいこともあれば、間違っていることもあります。まずは前提の検証が必要です。ですけど、なんとなく説得力がありませんか。それはこの論法が形式的、数学的だからです。前提が正しければ結論は間違いない、という論法だからです。

そのうえ、「社長がこのサービスに関心もっているらしい」といった、さらに真偽が不確かな前提三が加わることもあります。それでこのプロジェクトは実行に移されることになります。ここまでくると論理的でもなんでもないのですが、このような議論と結論は組織においては日常茶飯事と言えるでしょう。

前提の検証がおろそかなまま、一見論理的に結論が決まってしまうのです。そして、このプロジェクトに気乗りがしなかった人に実行のお鉢が回ってくるのもよくある話です。自然科学と違い、人間社会は実験によって真偽を検証できない事柄で成り立っており、その中で判断を求められます。

偏った論理思考は時に大きな過ちを犯してしまうことがあるのです。マクルーハンはこうした論理思考に対して「狂人は論理的間違いはしない。前提を間違えているだけだ」と強烈な皮肉を投げかけています。