認知症患者の保有資産は10年で215兆円に達する
以上、成年後見人による不正事例やその予防策などについて紹介した。
本稿で紹介した以外にも、認知症とお金をめぐる問題はさまざまあり、例えば、意思能力が不十分な人は、成年後見人がついていたとしても遺言を作ることできないという問題などもある。こうした点も踏まえると、認知症が進行してしまう前から、遺言や自分の代理人など、将来の資産管理について考え、準備しておくことが望ましいといえる。
第一生命経済研究所の試算※3では、認知症の人が保有する金融資産は2030年には215兆円に達すると推計されており、十分な対策がとられないままだと、こうした認知症とお金をめぐる問題は今後ますます増加していく恐れがある。
筆者は、こうした危機感から、さまざまな「認知症とお金の問題」の予防策について『国富215兆円クライシス 金融老年学の基本から学ぶ、認知症からあなたと家族の財産を守る方法』(星海社)にまとめている。読者の参考になれば幸いである。
*1:裁判所「成年後見関係事件の概況―平成31年1月~令和元年12月―」
*2:裁判所「後見人等による不正事例(平成23年から令和2年まで)」
*3:第一生命経済研究所「認知症患者の金融資産200兆円の未来〜2030年度には個人金融資産の1割に達すると試算〜」