“目標よりも少し先の未来”を想像する
私は目標を長くとらえるのが苦手だったので、出場した2回のオリンピックとも、ちゃんと見据えられたのは1年前からでした。
ただ、「1年後にここに出るんだ」と決めたときには、オリンピックの舞台に立つことをかなり具体的にイメージできるようになりました。自分が演技をしたあとの感情や周りの反応、会場の空気感……それらが、リアルに想像できるところまで、気持ちを持っていくことができたのです。
このように、“目標よりも少し先の未来”を想像することを、私は「目標の向こう側」と表現しています。そして、目標を達成したら、「自分にどんな喜びが得られるのか」「応援してくださる方たちが、どう喜んでくれるのか」を具体的に想像します。その喜びのためだったら、苦しいときもがんばることができるのです。
「目標の向こう側」は、すべて想像でしかないのですが、このイメージを豊かに持てれば持てるほど、自分にも期待できるし、ワクワクできる。この“イメージする力”は大いに利用すべきだと気づきました。
人の喜びをイメージし、困難を乗り越える
ともすれば、「失敗したらどうしよう」と、悪いことも想像しやすいし、自分だけだと感情的になりがちですが、そこにリアル感のある“人の喜び”を想像できれば、困難も乗り越えることができます。周りの人たちを喜ばせれば、自分も喜ぶことができる――。そんな、好循環をイメージするのです。
もちろん、「悔しさ」をバネにがんばることができる人もいますし、私にもその気持ちもあります。ただ、悔しさだけでものごとを成し遂げた場合、何のためにがんばっているのか、という気持ちが残ってしまいがちです。これでは、ずっとやり抜くことは難しいかもしれません。
仕事も同じで、たとえば「このサービスを提供したら、その向こう側でどれだけの人が便利になるか、どれだけの人が喜んでくれるか」ということが想像できれば、自然と実行する力が湧いてくるのではないでしょうか。
こうした想像力を持つには、普段から人を観察したりして、「こうすれば喜んでくれるんだな」と、素直に感じ取る力を磨くことが大切だと思います。
“何のための目標なのか”を見つめ直す
2013年の全日本選手権は、1年前に「結果がどうあれ、ここで選手としてのキャリアを終える」と、決めていました。
ちょうどその5年くらい前から、元旦に必ず1年の目標計画をつくるよう指導されていました。まず将来の姿を書き、次に今年1年の目標を書き、1月、2月、3月……と12月まで、その月に自分がやらなければならないこと、それを達成したときにどういう結果が得られるのかを書いていました。