フィギュアスケーターの鈴木明子さんは、摂食障害を乗り越え、2度の冬季オリンピックに出場した。さらに27歳での世界選手権メダル獲得、28歳での全日本選手権優勝と2つの日本最年長記録をもつ。鈴木さんは困難をどう乗り越え、目標を実現させたのか。金沢工業大学虎ノ門大学院客員准教授の石井大貴氏が聞いた――。

※本稿は、石井大貴『「目標」を「現実」に変えるたった3つのルール』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

フィギュアスケーターの鈴木明子さん
写真=筆者提供

“終わり”が見えて、初めてゴールの設定ができた

私は、10代の頃はまったく計画が立てられませんでした。たとえば、アスリートにとってオリンピックは一番目標とすべきことですが、それに向かって「今、自分が何をしなければいけないのか」を考えることができなかったのです。

むしろ、6歳でスケートを始めたときから、「試合で1位をとりたいから」というより、ただ単純に好きで続けていたら、だんだんと結果が出てきたという感じでした。ひとつずつ扉を開けていったら、次が見えてきたのです。

ところが、18歳のときの摂食障害で、一度、競技から離れ、復帰してから「フィギュアスケートの選手生命は長くない」と気づきました。そこで、「どんな自分でありたいか」「どういうキャリアで終えたいか」をリアルに考えられるようになりました。先が見えたときに、初めてゴールを設定することができたのです。

これ“必ず限りがある”人生においても一緒だと思います。未来をリアルに感じたとき、ようやく、見たくなかった自分、弱い自分に寄り添えるようになり、そこで“目標”というものをしっかり見据えられるようになるのではないでしょうか。

目の前の目標の扉をひとつずつ開いていくのと、ゴールを設定してから向かっていくのと、どちらも経験した私からすると、目標達成という意味では、1年でも、5年でも、10年でも、きちんとゴールを見据えて動いたほうが、実現はしやすいと思います。