計11チャンネルを運営する「東北新社」は明白な利害関係者

一連の処分とは別に、情報流通行政局長や総務審議官を務め、総務省を退官した山田真貴子内閣広報官(1984年、郵政省入省)は、在職中に7万4000円超の「違法接待」を受けたことが明らかになり、給与10分の6(1カ月)を自主返納することになった。

これらの処分を呼んだ「違法接待」は、菅首相の長男・正剛氏が勤める放送事業会社「東北新社」によるもので、判明しただけで2016年から2020年にかけて延べ39件、総額約60万円、うち21件に正剛氏が出席していた。

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「東北新社」は、計11チャンネルの衛星放送を運営しているため、総務省が許認可権を持っており、利害関係者そのものであることは明白。放送行政の中枢を担ってきた官僚なら、知らないわけはない。

だが、谷脇氏は2月22日の国会で、正剛氏らについて「利害関係者との認識はなかった」と答え、そのしらじらしさには失笑が漏れた。

秋本氏も湯本氏も当初、「利害関係者だとは思っていなかった」と弁明したが、こんなとぼけた釈明が通用するはずもない。放送業務に関わる話題についても、「記憶がない」とシラを切っていたが、「文春砲」の第2弾で会食の際の音声が暴露されると、一転して認めるというお粗末な展開をたどった。

「違法接待」をする側もされる側も「確信犯」

菅首相のお気に入りと言われる山田真貴子内閣広報官は、総務省の調査に「菅首相の長男と会食した明確な記憶はない」と回答、キーマンの正剛氏とことさらに距離を置こうとしたが、結局、「違法接待」を受けたことを認めざるを得なくなった。

山田氏は3月1日の衆院予算委員会で野党の質問に答える予定だったが入院して欠席。そのまま辞任した。

総務官僚が懲戒処分を受けたことを踏まえ、「東北新社」も2月26日、二宮清隆社長が引責辞任、会食を主導した三上義之取締役執行役員と木田由紀夫執行役員を解任、メディア事業部統括部長の正剛氏を懲戒処分にして人事部付に更迭した。

「違法接待」は、たまたま行われたのではない。接待する側もされる側も、責任を取って辞職したのだから、あらかじめ認識していた「確信犯」だったことを自ら明らかにしたようなものだ。

山田氏は2月25日の国会で、「東北新社」以外の放送事業者とも会食していることを明かした。1年前には、若者向け動画メッセージで、自身の歩みについて「飲み会を絶対に断らない女としてやってきた」と振り返っている。つまり、総務官僚と利害関係者の放送事業者との会食や懇親会は、日常茶飯事であることを認めたのだ。