“仲間意識”で安心して「違法接待」を受けた?

今回の「違法接待」では、「総務官僚は、菅首相の息子に誘われたら断れない」と総務省人事を牛耳る菅首相ににらまれるのを恐れて心ならずも会食に応じざるを得なかった旨の報道が目につくが、実情はいささか異なるようだ。

菅首相について「自分に徹頭徹尾従った人には人一倍の恩義を感じ、報いようとする。逆に、抵抗すれば干す」と評した元総務官僚がいた。

なるほど、現在の総務省幹部は基本的に菅首相の眼鏡にかなった人物であり、かつて菅総務相の政務秘書官を務めていた正剛氏とは旧知でもある。それだけに、仲間意識で安心して「東北新社」の「違法接待」を受けたという見方がある。官僚の心理としても、権力者の息子と懇意になればプラスに働き、うまく取り入れば出世も早まるという思惑が働いてもおかしくない。

一方、放送事業者としては後発の「東北新社」は、「権力者の息子」をフルに活用して、衛星放送事業を拡大してきたともいえる。

やはり「東北新社」は「特別」だった

衛星放送業界は、新規参入による競争激化や衛星利用料の負担軽減といったさまざまな懸案を抱えており、許認可権をもつ総務省とのパイプを太くしておくのに越したことはない。いささか高額な会食でも、特段の便宜を図ってもらったり極秘情報をいち早く入手できたりするのであれば、安い出費だろう。

「違法接待」が繰り返されている最中の2018年5月にはCS放送「囲碁将棋チャンネル」の新規参入が認められ、2020年12月にはBS放送「スター・チャンネル」の事業認定が更新された。

やはり「東北新社」は「特別」だったことをうかがわせる。

武田良太総務相が「違法接待」で「行政がゆがめられたことはない」と訴えても、額面通りに受け止める向きはいない。

菅首相は総務省の調査結果が明らかになった2月22日、「長男は別人格」という従来の主張を一変し、「長男が関係した結果、公務員が国家公務員倫理法違反をすることになった。大変申し訳なく、お詫びを申し上げたい」と陳謝せざるを得なかった。

首相官邸や総務省の右往左往ぶりは、突然撃ち込まれた「文春砲」の衝撃の大きさを物語っている。