「携帯電話値下げ」の谷脇審議官は次官昇任目前だった

総務省は、2001年(平成13年)の中央省庁再編により、自治省、郵政省、総務庁を統合して設置されたマンモス官庁。その総務省に「文春砲」が放った菅義偉首相の長男が絡んだ接待問題は、旧郵政省出身の総務審議官(事務次官級)に連なる大量の幹部が「違法接待」を受けたとして懲戒処分となり、首相官邸や霞が関を揺るがす「大事件」に発展中だ。旧郵政人脈の自壊で、菅首相の「天領」といわれる総務省は、今、旧自治官僚の天下になろうとしている。

2013年11月29日、安倍晋三首相(左、当時)と首相秘書官に任命された経済産業省商務情報政策局審議官の山田真貴子氏(当時)
写真=時事通信フォト
2013年11月29日、安倍晋三首相(左、当時)と首相秘書官に任命された経済産業省商務情報政策局審議官の山田真貴子氏(当時)

総務省は2月24日、総務省接待問題で国家公務員倫理規程が禁じる「利害関係者からの違法接待や金品贈与」を受けたとして、9人を懲戒処分にした。

国家公務員の懲戒処分は免職、停職、減給、戒告の4段階あり、戒告を受けると1年間、減給処分は1年半、停職の場合は2年間、昇任できなくなる。

今回の懲戒処分の筆頭は、菅政権の目玉政策である携帯電話値下げを指揮し、次期事務次官の最有力候補と目されてきた谷脇康彦・総務審議官(1984年、郵政省入省)だ。4回にわたる会食で飲食代やタクシー券など計約11万8000円の接待を受けたとして、減給10分の2(3カ月)の処分が下り、昇任は絶望的になった。官僚トップの座を目前にしての挫折は、悔やんでも悔やみ切れないに違いない。

旧郵政省の出身者ばかりが根こそぎ処分された

「文春砲」に狙い撃ちされた4人組のうち、谷脇氏と同格の元情報流通行政局長の吉田真人・総務審議官(1985年、郵政省入省)は減給10分の2(3カ月)、すでに更迭された秋本芳徳・前情報流通行政局長(1988年、郵政省入省)が減給10分の1(3カ月)、やはり更迭された湯本正信・前情報流通行政局担当総括審議官(1990年、郵政省入省)は減給10分の1(1カ月)の処分となった。

また、総務省の内部調査で「違法接待」が明らかになった吉田恭子・情報流通行政局衛星・地域放送課長(1994年、郵政省入省)、井幡晃三・同局放送政策課長(1993年、郵政省入省)、元同局担当総括審議官の奈良俊哉・内閣審議官(1986年、郵政省入省)の3人が減給10分の1(1カ月)とされた。

戒告は、元同局衛星・地域放送課長の玉田康人・官房総務課長(1990年、郵政省入省)と豊嶋基暢・同局情報通信政策課長(1991年、郵政省入省)の2人。

ほかに、懲戒処分までには至らない総務省内規に基づく訓告および訓告相当が1人ずつとなった。

処分を受けたのは、放送行政を担当する情報流通行政局の歴代局長や幹部が中心で、旧郵政省の出身者ばかり。総務官僚の中でも、旧郵政人脈の実力者が根こそぎ処分されたのである。

いずれも順調に出世階段を上ってきたキャリア官僚たちだが、今後の官僚人生に影響が出ることは避けられそうにない。