青い鳥症候群の「起業家医師」は結局、医療の現場に出戻るのか
しかしながら筆者の見聞きした範囲では、元外資コンサルタントの「その後」として最も多いのは、「普通の医師」に戻るケースだ。出戻り組の中には「患者様が安心して過ごす環境づくり」などと自社ホームページにそれらしいキャッチフレーズを掲げているものの、実際は「よくある高齢者向け開業医」ということはよくある。あるいは、カッコいい響きのカタカナ名の小さな会社を所有しつつも、実際の生計の多くは医師アルバイト業で稼いでいるパターンも見聞きする。
「上場」のような超成功事例でもない限り、結局のところ「一般の事業会社」が「普通の医者」をしのぐ収益を安定的に得ることは非常に困難なのだ。「外資コンサル」「MBA」「ベンチャー役員」と、いろいろとチャレンジしてみたものの最終的に「医師免許の貴重さ」「ライバルの少なさ」を実感して振り出しに戻る……「人生あるある」かもしれない。
医療系ベンチャー企業として「オンライン医療」をアピールするメドレー社だが、実際の事業内容は「介護士・看護師などの人材斡旋」との2本立てである。そして公表されている2020年第3四半期の決算報告を見ると、利益(EBITDA)のうち、医療介護人材派遣業が約6億円の黒字、オンライン医療は約1億円の赤字となっている。豊田氏がアピールするオンライン医療は、2017年のマザーズ上場以降、常に赤字の“お荷物事業”なのだ。また、メドレー社のトップは豊田氏ではなく、高卒後ビジネス界に入った別の男性である。代表取締役医師のイケてるイメージとは裏腹に、決算書から判断する分には「よくある人材紹介会社」なのだ。