安全性についての学術的な検証は厳しい
甘味料に対する社会の視線が厳しいのは事実です。出題文では取り上げられていないのですが、実はもっとも有名な事例は、サッカリンの発がん性問題。1970年代、ラットのオスで膀胱がんができるとして大問題となりました。しかし後に、ラットのオスは尿量が少なく尿が濃くなるため、実験で大量のサッカリンを与えられて膀胱内で結晶化し、それが刺激となってがんができていたことが判明しました。
サッカリンは砂糖の数百倍の甘さを持ち、人が大量摂取をするのは不可能です。また、3種のサルにサッカリンを24年間与える試験まで行われて1998年、「発がん性は認められない」とする結果が論文発表されました。今ではサッカリンは普通に使用されています。
こうした歴史的経緯があるため、甘味料は批判を受けがちです。安全性についての学術的な検証は厳しく、今も依然として多くの研究者がさまざまな研究を行っています。
「危ない」指摘も、検証されなければならない
たとえば前述のスクラロースについて、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は2019年、高温で加熱した場合には有害物質が発生する可能性があるとする意見書を公表しました。ただし、結論を出すにはデータが不足しているとし、当面は食品を加熱した後にスクラロースを添加するように助言。EFSAも、改めて研究結果などを集めて再評価中です。
また、学術誌ネイチャーに2014年、人工的な甘味料が耐糖能異常を引き起こしているという内容の論文が掲載され話題となりました。腸内細菌叢を変えてしまったためだ、と主張しています。が、その後に否定的な研究結果も複数発表され、確定的な説とはなっていません。
「甘味料は危ない」という研究が発表されると大々的なニュースとなります。その説を否定する研究結果は当たり前過ぎて報じられず、一般社会では今も「危ない」情報が氾濫しています。