※本稿は、橘木俊詔『大学はどこまで「公平」であるべきか』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
「共通一次試験」から「センター試験」へ
戦後の大学入試改革の歴史を振り返ったとき、最大のイベントと呼べるのは1979年の「共通第一次学力試験」の導入ではなかろうか。
これにより、それまで国公立大学の入学試験において、個々の大学が独自に一度の入試を課していただけだったのが、共通一次試験を加えた二度の試験を課すようになった(なお東京大学などは、共通一次試験導入以前から独自に一次と二次の試験を課していたが、それもあくまで全体においては一部に留まる)。
ここであらためて「共通一次試験」導入後の入試の流れについてざっと整理すれば、一次試験では、国公立大学志望の全受験生が同一問題の試験を受け、その点数を大学に送ることになる。そこでは5教科7科目が課せられていたが、各大学はそれに基づいて、いわゆる「足切り」を行って一次合格者を決め、それから大学個別の二次試験を受けることになる。その後、共通一次試験は1990年に「センター試験」に変更された。変化の柱は各大学が科目などを選択できるようになったことと、私立大学も希望すれば参加できるということである。その後2006年には英語にリスニングテストが導入され、現在へと至っている。
「達成度テスト」としての再構成を検討
一方でその間、一次試験は政府有識者会議などを通じ、「達成度テスト」という名称の元に再構成することが検討された。さらにそこから文部科学省の審議会を通じて「大学入学希望者学力評価テスト」に名称が変更されるなど、かなりの紆余曲折を経てようやく「大学入学共通テスト」という名称に落ち着き、2021年度からの実施が決まったということだ。
なお「達成度テスト」構想そのものは2012年から始まっていた。ただし現実の入試を見てみれば、少なくとも2020年まではセンター試験のまま続いており、入試改革はなかなか進まなかったことがむしろよく分かる。
本来なら、入試改革に関しての最終責任は監督官庁である文部科学省が持つこととなる。日本が官僚国家である以上、そこがしっかりしていれば、改革案は決定されるはずだ。
しかし教育改革のみならず、日本の制度改革はいろいろな関係者が関与して民主的に行われるので、決定に時間がかかる。加えて入試改革については、国会議員、教育関係者、マスコミなどがそれぞれに意見を述べるので、議論がなかなか収束しない状況に陥っていたのだろう。
ともあれ中央教育審議会での部会などを経て、検討事項は「わずか一度だけの試験では公平性を保てないので、数回の受験機会を与える」、「試験実施、すなわち出題と採点を民間業者に委任してもよいのでは」、「できれば私立大学受験者も受けることができるようにする」、「試験問題に記述式の試問も課す」などに集約されていった。