一気に批判が高まった「身の丈に合わせて」発言

2019年以降の動きを振り返ってみると、入試改革の論点として、次の二つに焦点が当てられていたことが分かる。

一つは「英語における民間組織の運営する試験の導入」、二つは「国語・数学における記述式問題の導入」である。

民間試験の活用については、全国高等学校長協会などから「見送るべき」という議論が出ていたが、文部科学省はこの二つの改革を実施したいという意向を繰り返し表明。結果として2019年の秋頃には、おおむね決定直前にまで至った。

しかしその年の10月、萩生田光一文科大臣が「自分の身の丈に合わせて2回をきちんと選んで勝負してもらえれば」とテレビ番組内で発言。発言の真意はさておき「勉強のできない人や勉強の嫌いな人、あるいはそういう人が多い高校で学ぶ人は、自分の能力に合った大学を志願すればよい」という趣旨に理解され、感情的な反発を招くと、一気に入試改革に対しての批判論が高まることになる。

教室で勉強する高校生たち
写真=iStock.com/Xavier Arnau
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「公平さ」をめぐる批判はもともとあった

そもそも民間試験や記述式の導入に対しては、受験に強い高校の多い地域とそうでない高校が多い地域とで、地域間の格差が生じるのではないか、または費用がかかる以上、経済的な環境に左右されるのではないか、といった「公平さ」をめぐっての批判がくすぶっていた。そこに、大臣自ら格差を是認するような発言が飛び出して、流れが変わったのである。

その後、12月には萩生田大臣がこの二つの改革を見送ることを表明。2020年の1月から新しく「大学入試のあり方に関する検討会議」が始まることになる。

これは筆者の私見だが、政治家にも「規制緩和路線の支持と民間経済の活性化を期待する」一派もいれば、文教族の「大学改革や管理は大学に任せてはいけない」「政府・官僚が中心になって進めなければならない」と考える一派もいて、一枚岩ではないのだろう。